MT レベル1 の試験内容と受験資格・勉強法ガイド【2026 年版】

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2026/05/17
MT レベル1 の試験内容と受験資格・勉強法ガイド【2026 年版】
目次

MT レベル1 試験を受ける前に、まず押さえてほしいこと

MT レベル1 は、JIS Z 2305 に基づく磁粉探傷試験の入門級資格で、上位資格者の手順書のもとで現場作業を担う立場の人が取る位置づけです。手順書の作成や最終判定は上位級の役割で、レベル1 は「決められた条件を、決められた品質で再現する」ことを担当します。

これから MT レベル1 を受けるか迷っている人と、現場で MT を任されたばかりで資格の輪郭から把握したい非破壊検査技術者に向けた内容です。数値や試験運用は、2026 年時点で公開されている JSNDI(日本非破壊検査協会)の認証資格案内に基づいています。最新の正式値は出願時点で公式案内を必ず確認してください。

MT(磁粉探傷試験)はどんな試験種目なのか

強磁性鋼を磁化し漏洩磁束に磁粉が集まって表面きずを示す磁粉探傷の原理と4つの磁化方法の概念図

MT は、強磁性体である鋼材を磁化した状態で表面に磁粉を散布し、表面または表面直下にある不連続部から漏れ出す磁束に磁粉が吸い寄せられて模様を作る現象を利用して、きずを目視で検出する非破壊検査の一手法です。検出できるのは主に表面のきずと、表面直下数ミリ程度の浅い内部きずで、深い内部きずは原理上対象になりません。

MT の運用は、磁化方法と磁粉の種類の組み合わせで決まります。レベル1 の段階では、選定そのものを判断する役割は持ちませんが、自分が担当する手順がどの磁化方法・どの磁粉でなぜ成立しているのかを理解できる程度の知識は問われます。

代表的な磁化方法は次の 4 タイプです。

  • 軸通電法(軸状の試験体に直接電流を流して周方向磁界を作る)
  • プロッド法(試験体の任意 2 点に電極を当てて電流を流す)
  • 極間法(電磁石を試験体に当てて磁界を作る)
  • コイル法(試験体をコイルに通して長手方向の磁界を作る)

磁粉は「湿式・乾式」と「蛍光・非蛍光」の 2 軸で分類されます。

  • 湿式蛍光磁粉(暗室・ブラックライト下で観察、感度が高い)
  • 湿式非蛍光磁粉(白色光下で観察、可搬性が高い)
  • 乾式磁粉(高温部や粗面、現地での使用に向く)

MT は表面・表面直下のきず検出に強く、対象は強磁性体に限られる、というのが試験種目としての一番の特徴です。

MT・PT・UT の使い分け

同じく表面きずを対象とする浸透探傷試験(PT)と比較すると、MT は強磁性体に限定される代わりに、PT で見落としやすい表面直下のきずも一定の深さまで拾える点が違いになります。一方で非磁性のステンレス鋼やアルミニウムなどには使えないため、現場では対象材料に応じて MT と PT を使い分ける、あるいは併用する判断が求められます。

  • MT: 強磁性体(炭素鋼など)/表面〜表面直下数ミリ/鋳鍛造品・溶接ビードの表面割れ検出
  • PT: 材料種別の制約少/表面に開口したきずのみ/非磁性ステンレス・アルミの表面検査
  • UT: 金属全般/内部欠陥含む厚さ方向/溶接部の内部欠陥・厚板の減肉測定

MT レベル1 を受験するには何が必要か

JIS Z 2305 に基づく資格は 日本非破壊検査協会(JSNDI)の認証資格 として運用されており、各試験種目・各レベルごとに、受験前に満たしておくべき訓練時間と視力の要件が定められています。MT レベル1 についても、所定の訓練を修了していることと、視力(近距離・遠距離・色覚)の基準を満たしていることが受験申請時に確認されます。なお、JIS 規格そのものの正式な書誌情報は 日本規格協会(JSA) で確認できます。

訓練は、JSNDI が認める訓練機関で受講するか、勤務先で同等の訓練を受けることで充足する形が一般的です。訓練の中身は、磁化の原理、磁化方法ごとの特徴と適用範囲、磁粉と検査液の取り扱い、現場手順、判定基準などを座学と実習で押さえる構成になっています。

受験資格は試験種目ごとに別々に積み上げる仕組みなので、PT や UT で訓練時間が足りていても、MT を受けるには MT 用の訓練が別に必要になる点に注意してください。

視力要件は、近距離視力と遠距離視力に加えて、色覚(特に蛍光磁粉を使う場合に重要)も含まれます。眼鏡やコンタクトレンズで矯正した状態で基準を満たせば問題ありませんが、申請の段階で診断書の提出が求められます。受験を決めたら、訓練の予約と並行して、視力検査をどのタイミングで受けるかも段取りに入れておくのが安全です。要件の細かい数値は改定が入ることがあるため、出願シーズンごとに JSNDI の公式案内で最新版を確認するのが確実です。

試験当日はどんな構成と流れになるのか

MT レベル1 の試験は、大きく一次試験(学科)と二次試験(実技)に分かれています。一次試験は筆記、二次試験は実際に試験体を磁化して磁粉を散布し、きずを検出して記録する実技で、それぞれ別日程で行われます。一次が合格してから二次に進む形ではなく、申し込みの段階で両方を受験する組み立てが基本です。

一次試験の当日は、試験種目共通の一般試験と、MT に固有の専門試験が同じ日にまとめて行われるパターンが多く、午前と午後で配分されるイメージです。会場は全国の主要都市に複数設けられ、受験者は出願時に希望地を選びます。

二次試験は、磁粉探傷の装置と試験体が用意された実技会場で行われます。試験官の指示のもと、決められた時間内に磁化条件を設定し、磁粉を散布し、模様を観察して記録するところまでを一通り実施します。

一次試験(一般・専門)の出題範囲はどこか

一般試験の範囲

一般試験は、非破壊検査全般に共通する基礎を扱います。具体的には、検査の品質マネジメント、欠陥の種類と発生原因、各試験法の概要、安全衛生、報告書の基本事項などです。MT 専門ではない領域も含まれますが、用語と考え方を押さえれば取り組みやすい内容で、PT や UT のレベル1 を将来取るときにも資産になります。

専門試験の範囲

専門試験は MT に絞った出題で、以下の論点が中心になります。

  • 磁化の原理(電流と磁界の関係、磁束密度と磁界強さ、ヒステリシス曲線の基本)
  • 磁化方法ごとの適用範囲とメリット・デメリット
  • 磁粉の種類と検査液の取り扱い
  • 模様の解釈、欠陥模様と擬似模様の区別
  • 規格・手順書の読み方

レベル1 では、与えられた手順書のとおりに作業し、模様を識別できることを問う問題が多く、試験条件そのものを設計する出題は上位級に回ります。

出題形式と取り組み方

一次試験は基本的にマークシート形式で、計算問題よりも知識を問う設問が中心です。範囲が広いぶん、テキストを読み込みながら自分で要点をまとめ直し、似た用語を取り違えないように整理する作業が効きます。

二次試験(実技)では何を見られるのか

二次試験では、与えられた試験体に対して、適切な磁化条件を選び、磁粉を散布し、得られた模様から実際のきずと擬似模様を区別して記録するところまでが評価対象になります。レベル1 として求められるのは、手順書のとおりに作業を再現し、欠陥模様を見落とさず、明らかな擬似模様を欠陥と誤判定しないことです。

採点される一連の手順

具体的には、次の流れが採点対象になります。

  1. 前処理(脱脂・乾燥)
  2. 磁化装置の電流値設定と磁化(方向と回数)
  3. 磁粉の散布タイミング
  4. 観察(蛍光磁粉ではブラックライト下の暗順応も含む)
  5. 模様のスケッチや写真記録
  6. 後処理(脱磁・洗浄)

一つひとつの手順は単純でも、抜けや順序違いがあると減点につながりやすいので、本番では「何を、どの順番で、どれくらいの時間でやるか」を体に覚えさせておくことが効きます。

失点しやすいポイント

実技でつまずきやすいのは、磁化方向に対して直角でないきずを見落とす場面、観察前の照度・暗順応が不十分なまま判定に入ってしまう場面、後処理の脱磁を省いて次工程への影響を残してしまう場面などです。手順書を読みながら一通り通すだけでなく、「なぜこの順番か」を理解しておくと、本番で多少条件が変わっても対応しやすくなります。

MT レベル1 の合格率はどう読み、どう勉強すればよいか

合格率の数字をどう見るか

JSNDI の試験は、合格率がそのまま難易度を表すわけではありません。受験者の多くがあらかじめ訓練を修了し、勤務先のサポートを受けて準備して臨むため、母集団のレベルが揃いやすく、絶対的な得点基準で合否が決まる仕組みになっています。MT レベル1 単体の合格率は年度ごとに公開情報を確認するのが正確で、他の試験種目のレベル1 と大きく外れない水準で推移しています。合格率の数字そのものよりも、自分が一次・二次それぞれで合格基準点に届く準備をできているかという観点で見るのが実用的です。複数の試験種目の合格率を横並びで見たい場合は、非破壊検査の合格率の見方 も参考になります。

一次試験の対策

一次は、JSNDI のテキストと過去問題集を中心に、出題範囲を一通り通したうえで、間違えた設問を分野別にまとめ直す進め方が効きます。具体的には次の流れで回します。

  • テキスト通読で全体像を掴む(用語・図解・規格名を押さえる)
  • 過去問を分野別(一般/専門の各論点別)に解き、誤答を分類する
  • 似た用語(磁界強さと磁束密度、残留磁気と保磁力など)の混同を一つずつ潰す
  • 直前は新範囲に手を広げず、これまでの誤答ノートを見返す

二次試験の対策

二次は、訓練機関の実習だけで本番に臨むより、勤務先の試験体・装置で繰り返し通し練習をしてから受けるほうが安定します。練習の組み立て方の例は次のとおりです。

  • 手順を口に出しながら動き、抜けを自覚する
  • タイマーで所要時間を測り、規定時間内に収める感覚をつける
  • 欠陥模様と擬似模様を意図的に作って判別する
  • 後処理(脱磁・洗浄)まで含めた一連の通し練習を繰り返す

MT レベル1 を取ると何ができるようになるのか

薄暗い現場で極間法ヨークを溶接部に当て蛍光磁粉の指示模様が浮かび上がる磁粉探傷の検査風景

MT レベル1 を取得すると、上位資格者(レベル2 以上)が作成・承認した手順書に従って、磁粉探傷の作業そのものを担当できる立場になります。具体的には、現場で電流値の最終調整、磁粉の散布タイミング管理、模様の観察と記録、後処理(脱磁・洗浄)までの一連の作業を担います。手順書の作成、検査計画の立案、最終的な合否判定といった責任は上位級が持つ分担です。

典型的な検査対象

現場で MT が使われる典型的な対象物には、次のようなものがあります。

  • 鋳鍛造品の表面割れ・湯境・引け巣の表面欠陥
  • 溶接ビード端部の止端割れ・アンダーカット
  • 軸部品のキー溝コーナーや段付き部の疲労亀裂
  • 橋梁や鉄骨の溶接部の保守点検

業界ごとの登場場面

強磁性体を扱う場面で MT は広く登場し、業界によって典型的な対象物と頻度が変わります。

  • 製造業(鋳鍛造・機械加工): 鋳鍛造品・軸部品の出荷検査で日常的に登場
  • プラント(石油・化学・電力): 圧力容器・配管溶接部の定期検査で集中的に発生
  • インフラ(橋梁・鉄骨): 保守点検時の溶接部・接合部検査で活躍
  • 輸送機器(鉄道・自動車): 車輪軸・台車部品の保守検査で定期的に使用

上位級との役割分担

レベル1 と上位級の関係は、ざっくり次のような分担になりがちです。手順書の磁化条件設定や合否判定はレベル2 以上が担当し、現場での電流値の最終調整・磁粉散布・記録はレベル1 が担当する、というイメージです。労働安全衛生法に基づく 就業上の健康管理や安全教育 の枠組みの中で、磁化装置の電気的安全、ブラックライトや磁粉に関する取り扱い、磁化後の脱磁といった衛生・安全面の配慮も含めた業務になる点が、MT 担当者の特徴の一つです。

キャリアの起点としての位置づけ

キャリアの出発点としては、レベル1 を取って現場で経験を積みながら、同じ MT のレベル2 や、他試験種目(PT、UT、RT)のレベル1 を順に積み上げていくルートが一般的です。資格群全体の地図を先に俯瞰しておきたい場合は 非破壊検査の資格 完全ガイド を、MT に絞ってもう少し全体像を整理したい場合は MT の総合ガイド を併せて読むと、MT レベル1 をどの順番で位置づけるかが見えやすくなります。

次に何をするか

MT レベル1 を受けるかどうかは、受験資格・試験構成・勉強法・取得後の役割の 4 つを自分の今の立場に重ねると判断しやすくなります。立場別に、優先して確認したい論点が変わります。

  • すでに勤務先で MT を任されている人: 社内の訓練枠と費用負担の制度、次の試験日程までの猶予を確認するのが最短です。
  • 他試験種目(PT/UT)の有資格者で MT を追加する人: 一般試験は学習資産が活きるので、専門試験と実技に絞って準備時間を組むと効率が良くなります。
  • 未経験から非破壊検査業界に入ろうとする人: まず自分が入りたい業界(製造、プラント、インフラ、輸送機器など)でどの試験種目が中心になるかを見て、MT が最初か、PT や UT が先かを比較してから選ぶと、後悔が少なくなります。

たとえば、どの訓練機関を選ぶか、MT を先にするか PT・UT を先にするか、社内の費用負担枠をどう使うかといった、MT レベル1 を受けるかどうかと並んで悩みやすい論点もまとめて整理できます。業界の選択肢や自分の経歴に合う進み方を整理する段階で迷っているなら、転職するかどうかを決める前に話してみるだけでも、次の一手は見えやすくなります。今の経験で見える業界・職種・資格の組み合わせを並べ直すための場として、無料キャリア相談 を用意しています。