電験二種とは?特別高圧まで監督できる電気主任技術者の上位区分
電験三種を持って働くなかで、求人票の「電験二種以上」という条件を見て、次の区分を意識し始める人は少なくありません。電験二種は電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物の保安を監督できる区分で、試験は一次試験4科目に加えて、記述式の二次試験2科目で構成されています。第三種と第一種の間に位置する上位区分です。
本文の制度・試験情報は、2026年9月時点で電気技術者試験センターが公表している内容にもとづいています。選任義務の考え方など制度全体は電気主任技術者とは?選任義務・第一種〜第三種の違い・試験までで解説しています。
電験二種の正式名称・根拠法と電気工事士との違い
「電験」は、電気技術者試験センターが実施する電気主任技術者試験の略称で、区分ごとに「電験一種」「電験二種」「電験三種」と呼ばれています。電験二種は、第二種電気主任技術者試験、またはその免状を指す言い方です。求人票や社内の会話では、正式名称より通称のほうがよく使われます。
電気主任技術者は、電気事業法にもとづいて、事業用電気工作物の工事・維持・運用に関する保安の監督を担う国家資格です。発電所や変電所、高圧・特別高圧で受電する工場やビルなど、事業用電気工作物を設置する者には、電気主任技術者を選任する義務があります(電気事業法(e-Gov 法令検索))。免状は第一種・第二種・第三種の3区分で、区分によって監督できる設備の範囲が変わります。
ここで混同しやすいのが電気工事士です。電気主任技術者は保安監督の資格で、電気工事士は工事作業そのものを行うための資格です。根拠となる法律も別で、電気主任技術者は電気事業法、電気工事士は電気工事士法にもとづきます。電験二種を持っていても、それだけで工事作業の資格を兼ねるわけではありません。
また、電気主任技術者の免状には定期的な更新制度がありません。一度取得すれば原則として有効です。ただし、保安の現場で求められる知識は設備の更新や法令の改正とともに変わっていくため、実務での継続的な学習は別の話として必要になります。免状は試験に合格して取得する方法のほか、所定の学歴と実務経験をもとに申請して交付を受ける認定の仕組みもあります。認定の要件は区分や学歴によって異なるため、このルートを考える場合は所管の産業保安監督部の案内で条件を確かめることになります。
「電圧17万ボルト未満」という監督範囲は現場で何を指すか

電気技術者試験センターの資格概要では、第二種電気主任技術者は電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物の工事、維持及び運用の保安の監督を行うことができる、とされています(電気技術者試験センター「電気主任技術者について」)。
一般的な中小規模のビルや工場は、6,600ボルトの高圧で受電していることが多く、この規模であれば第三種の範囲に収まります。これに対して、大規模な工場、データセンター、大型の商業施設などでは、数万ボルト以上の特別高圧で受電するケースがあります。国内の送配電で使われる電圧には、22,000ボルト、33,000ボルト、66,000ボルト、77,000ボルト、154,000ボルトといった段階があり、このうち154,000ボルトまでは17万ボルト未満に収まります。66,000ボルトや77,000ボルトで受電する事業場は第三種の範囲を超えるため、電験二種以上の免状を持つ人が必要になる、という位置関係です。
もう一つ見落としやすいのが発電所の扱いです。第三種の範囲には「出力5千キロワット以上の発電所を除く」という条件が付いていますが、第二種の範囲には出力の条件が書かれていません。つまり、電圧が5万ボルト未満であっても、出力5千キロワット以上の発電所は第三種では監督できず、第二種以上の区分が必要になります。太陽光やバイオマスなど、一定規模以上の発電設備を扱う職場で電験二種が求められる背景には、この違いがあります。
実際にどの区分が必要かは、個々の事業場の受電電圧や発電出力、保安体制の組み方によって決まります。求人票に「電験二種以上」と書かれている場合は、その事業場の設備がどの規模にあたるのかを面接で確かめておくと、入社後の担当範囲をイメージしやすくなります。
第三種・第一種と比べて電験二種の範囲はどこまで広いのか
3つの区分の監督範囲と試験の段階は、次のとおりです(電気技術者試験センター「電気主任技術者について」)。
- 第一種:監督範囲はすべての事業用電気工作物/試験は一次試験+二次試験/主な職場の例は基幹系統の変電所や大規模発電所
- 第二種:監督範囲は電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物/試験は一次試験+二次試験/主な職場の例は特別高圧受電の工場・データセンター、一定規模以上の発電所
- 第三種:監督範囲は電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所を除く)/試験は一次試験のみ/主な職場の例は高圧受電のビルや工場
第三種からの広がり
第三種と比べると、電験二種は監督できる電圧の上限が5万ボルト未満から17万ボルト未満へと大きく上がり、発電所の出力条件もなくなります。高圧受電のビルや工場で経験を積んだ人にとって、電験二種は、特別高圧で受電する大規模な事業場や発電設備へと担当範囲を広げるための区分です。
第一種との違い
最上位の第一種では、すべての事業用電気工作物を監督できます。17万ボルト以上の電圧を扱う大規模な変電所や、基幹系統につながる発電所などは、第一種の範囲です。電験二種と電験一種の差は、この17万ボルト以上の領域を扱えるかどうかにあります。
数の上では、17万ボルト以上で受電・送電する設備は限られます。そのため、需要家側の保安業務では電験二種でカバーできる範囲がかなり広く、第一種が必要になるのは電力会社の基幹設備や大規模発電所など、特定の職場に寄っている傾向があります。電験二種は、需要家側の多くの特別高圧設備をカバーできる区分です。
電験二種の試験構成:一次試験4科目と記述式の二次試験2科目

第二種の試験は、一次試験と二次試験の2段階で、構成は次のとおりです(電気技術者試験センター「第二種電気主任技術者試験 試験概要」)。
- 一次試験:理論・電力・機械・法規の4科目/マークシートによる多肢選択方式/科目別合格制あり
- 二次試験:電力・管理、機械・制御の2科目/記述方式/科目別合格制なし
一次試験:理論・電力・機械・法規
科目名は第三種と同じですが、第二種では扱う設備の規模が大きくなる分、出題の範囲や深さも変わります。第三種の学習で基礎を固めた人でも、第二種の一次試験は改めて出題範囲を確認し直す前提で臨むほうが安心です。
二次試験:電力・管理と機械・制御
二次試験は、選択肢から選ぶのではなく、計算の過程や説明を自分で書いて答える試験です。一次試験で身につけた知識を、設備の運用や保安管理の判断に結びつけて説明する力が問われます。受験できるのは、同じ年度の一次試験の合格者と一次試験の免除者に限られます。
電験二種の難易度が高いとされる大きな理由が、この二次試験です。二次試験には科目別合格制度がありません。2科目を同じ年度にそろえる必要があるうえ、マークシートでは得点できていた人でも、記述式では途中の式や根拠の書き方に慣れていないと点を落としやすい傾向があります。二次試験の対策は、一次試験の勉強とは別に時間を確保する前提で考えておくほうが現実的です。
合格率は年度によって変動し、電気技術者試験センターが試験結果として公表しています。受験を検討する段階で、直近の一次・二次それぞれの結果を電気技術者試験センターの公式サイトで確認しておくと、準備期間を見積もる材料になります。
合格までの期間をどう見積もるか:科目合格と一次免除の期限
電験二種の試験制度には、合格までの期間に関わる免除の仕組みが2つあります(電気技術者試験センター「第二種電気主任技術者試験 試験概要」)。
- 科目合格による免除:一次試験で一部の科目だけ合格した場合、翌年度と翌々年度の試験では申請によりその科目が免除される
- 一次試験の免除:一次試験に合格した年度の二次試験に不合格となった場合、翌年度の一次試験が免除される
一次試験の科目合格は翌年度・翌々年度まで
合格した年度を含めて3年間で4科目をそろえればよいので、1年目に2科目、2年目に残りの2科目といった分け方ができます。
二次試験に挑戦できる機会は一次合格の年度と翌年度
翌年度の二次試験にも合格できなかった場合は、改めて一次試験から受け直すことになります。
合格までの期間は、二次試験の準備期間をどう確保するかでほぼ決まります。一次試験の最後の科目を取る年度から二次試験の記述対策を並行して始めておくと、一次合格後の2回の機会を無駄にしにくくなります。すでに第三種を持っている人は、一次試験の科目構成や出題形式に一度触れている分、学習の立ち上がりは早くなりやすい一方で、二次試験の記述式は第三種に無い試験なので、ここは未経験の人と同じ条件から準備することになります。試験日程や申込期間は年度によって変わるため、最新の受験案内は電気技術者試験センターの公式サイトに掲載されています。
上位区分の電験二種を持つと仕事の選択肢はどう変わるか
電験二種を持つ意味は、監督できる設備の範囲が広がることに尽きます。第三種では担当できなかった特別高圧受電の事業場や発電所でも、17万ボルト未満であれば電気主任技術者として選任される立場になれます。事業場の側から見れば、電験二種を持つ人がいることで、選任できる候補者の幅が広がることになります。
電験二種が活きる主な職場と、そこで電気主任技術者が担う業務には、たとえば次のようなものがあります。
- 特別高圧で受電する大規模工場の電気保安部門:受変電設備の巡視・点検、年次点検の計画と立会い
- データセンターや大型商業施設の設備管理:保安規程にもとづく点検記録の管理、停電を伴う作業の計画と安全確認
- 発電事業者の保安部門:発電設備と連系設備の点検計画、保安規程にもとづく運用管理
高圧受電の設備から特別高圧の設備に担当が移ると、保護継電器の整定や上位系統との保護協調、停電作業の影響範囲の確認など、事前に調整する項目が増えるのが一般的です。第三種で積んだ経験を土台にしつつ、こうした設備規模の違いに合わせた知識を足していくことになります。
転職だけが選択肢ではありません。今の職場に特別高圧の設備がある場合、電験二種を取ることで、その設備の担当への異動や、現任の電気主任技術者の後継候補として扱われる道が開けることもあります。第三種で入社してから上位区分を目指す人もいて、取得を支援している企業もあります。
一方で、電験二種を取れば担当できる設備がすぐに変わるとは限りません。実際の選任は、事業場ごとの保安規程や体制、本人の実務経験を踏まえて決まります。資格は担当範囲を広げるための条件であり、その範囲の設備を任されるには、現場での経験の積み重ねが並行して必要になります。
なお、電験の年収について公的統計で調べる場合、賃金構造基本統計調査には「第二種電気主任技術者」と同じ名前の職種区分はありません(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)。統計を引くときは、資格名ではなく自分の職務内容に近い職種や産業の区分を選んで参照することになります。資格そのものの年収として数字を扱わないよう注意が必要です。
電験二種を目指すか迷ったときの判断材料
電験二種を目指すかどうかは、自分が関わりたい設備の受電電圧でおおよそ決まります。高圧受電のビルや工場で保安の経験を積むなら第三種で足りることが多く、特別高圧で受電する事業場まで担当範囲を広げたいなら電験二種が視野に入ります。17万ボルト以上の基幹設備まで扱いたい場合は、第一種が対象になります。
試験の面では、科目合格と一次試験の免除を使って数年単位で計画を組み、記述式の二次試験に十分な準備期間を割けるかどうかで受験時期を決めるのが基本です。
設備の保安に関わる資格は、電気主任技術者だけではありません。溶接部や配管などの健全性を確かめる検査系の資格も、プラントや発電設備の保安を支える仕事につながっています。検査系の資格も含めて比較したい場合は、非破壊検査の資格一覧と難易度もあわせて参考になります。
転職するかどうかは、話してから決めれば大丈夫です。今の経験と取得済みの区分で応募できる職場、電験二種を取った後に広がる選択肢を並べてみるだけでも、次に何を優先するかは見えやすくなります。整理の相手が欲しいときは、無料キャリア相談をご利用ください。
