ET Level2の取り方|受験資格・実務経験・勉強法【2026年版】

カテゴリー:非破壊検査技術者タグ:公開日:
ET Level2の取り方|受験資格・実務経験・勉強法【2026年版】
目次

ET Level2とは何か、何ができるようになる資格か

この記事は、渦電流探傷試験(ET、Eddy Current Testing)のLevel2を取りに行くか迷っている非破壊検査の現場技術者と、ETを軸にキャリアを組み立てたいと考えている人のために書きました。

読み終わる頃には、ETがどのような原理で何を見つける検査なのか、Level2を取ると現場でどこまで任せてもらえるのか、受験資格としてどれだけの訓練時間と実務経験が必要なのか、そして筆記と実技の二段構えの試験をどう攻略していくかについて、自分で受験スケジュールを引ける状態を目指します。前提として、内容は2026年時点のJSNDI認証制度に沿って整理しています。要綱は年度ごとに改訂される可能性があるので、申請前には公式の最新情報もあわせて見ておくと安心です。

ETは、コイルに交流電流を流して試験対象の表面近くに渦電流を発生させ、傷や材質の違いによってその渦電流が乱れる様子を電気信号として捉える検査手法です。電磁誘導という物理現象を利用するので対象は導電性のある金属に限定されますが、非接触で表面から数ミリの欠陥や材質変化を素早くスキャンできるため、熱交換器の細管検査や航空機部品の表面割れ検査など、他の手法では追いつかない領域でET技術者の出番が回ってきます。

JSNDI(日本非破壊検査協会)の認証制度では、ETを含む各試験種目についてLevel1からLevel3までの三段階が用意されています。Level1は指示書に従って装置の操作と記録を行う実務担当、Level2は試験条件の選定・判定・報告書のとりまとめまで一人で完結できる中核技術者、Level3は手順書を作成し他の技術者を指導・教育する役割という整理です。現場で「ETの仕事を任される技術者」として独立して動けるラインがLevel2なので、ETに関わる人がまず目標に置く資格になります。

Level2を取得すると、勤務先によっては危険手当や資格手当が設定されたり、検査会社によっては顧客に提出する報告書のサインができる立場になり、出張案件のリーダーや一次窓口を任されるようになります。逆に言えば、Level1のままだと指示を受ける側にとどまり、報告書の責任者になれないため、転職や昇給を考え始めたタイミングでLevel2の取得が現実的なテーマとして上がってくることが多い資格です。

ET Level2を受けるには何時間の訓練と、どれだけの実務経験が必要か

JSNDIの認証資格は、誰でもいきなり受けられるわけではなく、試験種目ごとに「訓練時間」と「実務経験」という二つの要件が定められています。ETのLevel2については、JSNDIが公開している非破壊試験技術者資格認証制度のページに最新の要件が整理されているので、申請前に公式の数値を一度確認しておくのが安全です。試験要綱は年度ごとに改訂が入る可能性があり、訓練時間の換算ルールや実務経験の取扱いも細かい変更が起こるためです。

大枠としては、ET Level2を新規で受験する場合、Level1相当の知識を含む形で所定の訓練時間を満たすこと、そしてETに関する一定期間以上の実務経験を積んでいることの両方が求められます。訓練時間は、座学(試験原理・装置構成・試験法・規格・安全衛生)と実技(試験準備・操作・データ収集・判定・報告書作成)の両方が対象です。Level2をいきなり受ける「Direct Access」型の受験ルートと、Level1取得後にLevel2へステップアップするルートでは、必要な合計時間や免除範囲が違うため、自分のキャリアに合うルートを最初に選ぶ必要があります。

参考までに、JSNDI が運用する JIS Z 2305:2013 では、ET の訓練時間は Level1で40時間、Level2で48時間(Level1 を経ない直接受験は合計88時間)が下限です。ET は従来制度では合計80時間相当でしたが、現行制度で変更されている点に注意してください。実務経験についても、Level2の認定にはETに関わる現場業務を数か月〜1年単位で積んでいることが基本ラインとされるケースが多いです。具体的な時間数・月数は、受験する年度のJSNDI要綱の値が一次情報になります。

訓練時間は、勤務先の社内研修プログラムや、JSNDIが認定した訓練機関の講習で積み上げます。社内で訓練時間を積む場合は、講師の資格(多くはLevel3保持者)、教材、訓練の出席記録、実技指導の内容を整理した訓練記録簿が要点です。受験申請のときにこの訓練記録を添付するため、後から「やったはずなのに記録がない」と困らないように、研修を受けた段階で都度サインをもらって保管しておくのが現実的です。

もう一つの実務経験は、ETに関わる検査業務に従事した期間で計上します。ここで大事なのは「ETを実際にどれくらい触ったか」が問われる点で、肩書きが検査員でもETに関与しなかった期間はカウントしづらくなる傾向があります。配属がET主体の現場でない場合は、社内の品質管理部門と相談して、ETに関わった案件のリストや作業時間を別途記録しておくと、申請時の証憑としてかなり強くなります。

Level1をすでに保有している人がLevel2を狙う場合は、Level1取得時に積んだ訓練時間を一部引き継げるルールがあります。ただし「Level2に必要な追加の時間」がゼロになるわけではないので、Level1合格後すぐにLevel2を申請するのではなく、追加の訓練と実務をある程度積んでから受けに行く流れが一般的です。Level1の合否通知に同封される案内をもとに、次の受験申請のタイミングを決めます。

実務経験はどの業務がカウントされるのか

受験申請でつまずきやすいのが、この実務経験の数え方です。条文上は「ETに関する非破壊試験の経験」と書かれているのですが、現場のキャリアは多様で、検査会社・プラントメーカー・航空機整備・自動車部品など業種ごとにETの関わり方が違います。自分の業務がどこまで申請に使えるかは、判断材料を整理してから人事や品質保証の窓口に相談するのがよい流れです。

カウントしやすいのは、ET検査の流れの中で技術者として手を動かしていた業務です。具体的には次のような業務が該当します。

  • ETの試験計画立案と適用範囲の検討
  • 探傷コイルの選定とキャリブレーション
  • 校正試験片を使った装置の感度調整
  • 実機での走査と信号データの収集
  • リサジュー信号の解析と欠陥指示の判定
  • 検査報告書の作成とサイン

これらは時間も内容も明確に書きやすく、訓練時間と並べて記載しても矛盾が出にくくなります。一方、判断が分かれやすい業務もあります。

  • ET装置のメンテナンスのみを担当していた期間
  • 検査の手配や顧客対応中心で実機操作の頻度が低かった期間
  • ETの結果を集計するだけで判定に関与しなかった期間
  • 非破壊検査全般の品質管理で、ETに直接触れる頻度が限られた期間

これらは「全くカウントできない」とまでは言えませんが、申請書類で業務内容を具体的に書けないと審査側も判断材料に困るので、作業日報や検査記録をもとに、ETに直接触れていた業務を時間単位で抜き出して整理しておくと無難です。

派遣・常駐・社内出向のような勤務形態の場合は、所属会社と就業先のどちらが訓練と実務の証明をするかが論点になります。JSNDIの要綱では、業務に関する事実関係を確認できる立場の責任者が証明することになっているため、就業先のLevel3技術者やプロジェクト責任者にサインをもらう運用が現実的です。証明者が辞めてしまうと再証明が困難になるため、在籍中に書面化しておくのが安全です。

一次試験(筆記)と二次試験(実技)の中身

ETを含むJSNDIの認証試験は、一般的に一次試験(筆記)と二次試験(実技)の二段階で構成されます。Level2は両方に合格して初めて認証取得となり、片方だけ通っても次の試験で残った片方を受け直すという扱いになります。一次と二次は別日程で行われることが多いので、両方を一つのスケジュールに乗せて準備していくことになります。

一次試験(筆記)の出題範囲

一次試験は四肢択一の筆記試験で、ETの原理から試験法、関連規格、安全衛生、報告書作成までを広く問います。原理パートで核になるキーワードは、おおむね次の領域に分かれます。

  • 電磁誘導の基礎とコイルに発生する磁束
  • 表皮効果と探傷深さの関係
  • リフトオフ(コイル‐試験面距離)の影響
  • フィルファクター(貫通コイル充填率)の意味
  • コイルの種類(プローブ型・貫通型・内挿型)の使い分け
  • 欠陥指示と妨害信号(材質変動・形状変化)の見分け

これらの用語が試験信号にどう影響するかを定量的に説明できるレベルが、Level2の筆記で求められる理解の深さです。

規格に関しては、JIS規格検索(JISC)で参照できるJIS Z 2305(非破壊試験技術者の資格及び認証)の枠組みに加え、ETそのものの試験方法を定めるJIS規格、対象部品ごとの製品規格や受入規格が範囲に入ります。Level2では、規格の番号と項目を覚えるだけでなく、それぞれの規格がどの場面で参照されるかを説明できる程度の理解が必要です。

二次試験(実技)の流れ

二次試験は、実機を使って指定された試験片を検査し、信号の解釈、欠陥の有無の判定、報告書の作成までを所定の時間内に行います。試験片には平板・パイプ・熱交換器細管などETの典型的な対象が出題され、人工欠陥(ノッチ、貫通穴、減肉模擬)から得られる信号波形を読んで、欠陥の種類と概略の寸法を判定する力が見られます。

実技で点を落としやすいポイントは大きく三つです。

  • 装置のキャリブレーション手順を毎回ゼロから正確に再現できるか
  • 走査速度を一定に保ち、信号の取りこぼしを防げるか
  • 得られた信号の判定根拠を、第三者に伝わる言葉で報告書に書けるか

普段の現場では先輩がやっている手順を試験ではすべて自分で説明しながら進める必要があるため、頭で分かっていても実機に触る時間が少ない受験者は、実技直前にまとまった練習機会を作っておくことが重要になります。

ETならではの難しさとUT・MT・PTとの違い

非破壊検査の各試験法は、検出原理がそれぞれ違うので、得意な対象と難易度の出方も変わります。ET Level2を狙うなら、UT・MT・PTといった他の試験種目との違いを押さえておくと、勉強の力点が定まりやすくなります。各手法の役割は次のように要約できます。

  • UT(超音波探傷試験):金属内部の欠陥が主戦場。波形(Aスコープ)の読解と不感帯の扱いが鍵
  • MT(磁粉探傷試験):強磁性体の表面開口傷を狙う。原理が直感的で、磁化と磁粉の管理が要点
  • PT(浸透探傷試験):材質を問わず表面開口傷を可視化する。表示が直感的で前処理と現像の管理が要点
  • ET(渦電流探傷試験):導電性金属の表面〜表面下数ミリを非接触・高速で走査。リフトオフや材質変動などの妨害信号と戦う

UT(超音波探傷試験)は、内部欠陥を検出できる強みがありますが、表面近傍の不感帯や底面エコーとの干渉など、波形読解の経験値が問われます。MT(磁粉探傷試験)とPT(浸透探傷試験)は表面の開口傷を狙う手法で、原理がシンプルなぶん試験準備と表示の解釈で勝負が決まります。これに対してETは、表面〜表面下数ミリの欠陥を非接触で素早く検出できる手法ですが、その代償として、リフトオフ・材質変動・形状変化など、欠陥以外の要因で信号が動きやすい難しさがあります。

Level2の試験で問われるのは、この「欠陥に由来する信号」と「妨害要因に由来する信号」の見分けです。ETは信号が二次元のリサジュー図形で表示されるため、波形の形状・位相・振幅を組み合わせて判断する必要があり、UTのAスコープに慣れた人ほど最初は読みづらく感じやすい傾向があります。逆に、ETの判定経験を積んだ技術者は、他社からの引き合いも増えやすく、市場価値の上がり方が読みやすい資格でもあります。

勉強の力点としては、原理の章で電磁誘導の式と渦電流の発生・分布を腰を据えて理解し、走査と信号解釈の章で「信号がこう動くのは何の要因か」を一つずつ分類できるようにしておくと、実技にも筆記にも効きます。MT・PTを先に取得している受験者は、表面開口傷の検査経験を活かしつつ、ET特有の信号解釈を上乗せしていく順番が現実的です。

合格に向けた勉強はどう進めるか

2026年度の受験を想定すると、ET Level2は、原理の理解、規格の把握、実技の習熟という三つの軸が均等に求められる試験です。どれか一つに偏ると、試験当日に取りこぼしが出やすいので、勉強計画も三つの軸を並走させる形で組むのが安全です。

原理パートの押さえ方

原理パートは、JSNDI発行の公式テキストや、ETを扱った非破壊検査の標準的な教科書をベースに、電磁誘導・渦電流・表皮効果・リフトオフ・位相回転といった用語を、自分の言葉で説明できるレベルまで落とし込みます。式を覚えること自体より、「周波数を上げると探傷深さがどう変わるか」「リフトオフが大きくなると信号はリサジュー上のどちら方向に伸びるか」を、自分でラフに図示できるかどうかが目安になります。

原理は一度理解すれば実技の信号解釈にもそのまま効くので、最初の1か月はここに時間を割く価値があります。逆に、用語の暗記だけで通り抜けようとすると、実技の波形を見たときに判断の根拠を組み立てられず、二次試験で失点する原因になります。

規格パートの押さえ方

規格パートは、JIS Z 2305と、ETの試験方法に関するJIS、自分の業界で使う製品規格・受入規格を一覧にして、規格番号・タイトル・主要な項目をまとめノートに整理するやり方が定番です。出題範囲は広いので、すべてを丸暗記するのではなく、「この規格は何のための規格か」「Level2の役割でどの章を参照するのか」を押さえるのが現実的なゴールです。

実技パートの押さえ方

実技は、訓練機関の講習や勤務先の校正試験片を使った繰り返し練習が一番効きます。前章で挙げた「キャリブレーション手順」「走査速度」「判定根拠の書き方」の3点を、毎回ゼロから自分の手で再現できるかどうかが、実技直前のチェック項目になります。

独学派の受験者がつまずきやすいのは、実技の練習時間を確保できないケースです。勤務先にET装置がない場合は、JSNDIの認定訓練機関や、装置メーカーが主催する有償の技能講習、検査会社が外部向けに開いている短期実技研修などを早めに予約するのが現実的です。費用感は数日のコースで数万円〜十数万円のレンジが多く、二次試験前に最低でも数日間まとまった実技時間を確保しておくと、合格率の実感が変わってきます。

受験までのスケジュールをどう組むか

ET Level2の試験は年に複数回(一般に春期と秋期)実施されており、申請から受験、合否通知までは数か月単位で動きます。2026年度の試験日程と申請受付期間はJSNDIが公式に公表しているので、職場の繁忙期と重ならないように、受験予定回を早めに決めておくのが安全です。仕事の繁忙期と受験準備が重なると、訓練時間の確保が難しくなって不合格を引きずる原因になるので、半年〜1年単位でスケジュールを引いて、職場と擦り合わせておくのが望ましいところです。

典型的な進め方は、受験予定日の半年前までに必要な訓練時間と実務経験のギャップを洗い出し、足りない部分を社内研修や認定訓練機関の講習で埋め、3か月前から筆記対策、1か月前から実技対策に集中、最後の2週間で過去問題と模擬実技を回すという流れです。過去問題は最低でも2〜3周し、模擬実技は本番までに少なくとも2〜3セット通しでこなすのが現実的な目安です。Level1から続けて受ける場合は、合計で1年以上のスパンを見ておくと無理がありません。

業務との両立では、安全衛生まわりの法令にも目を配っておきたいところです。検査現場では狭所進入や高所作業、放射線管理区域内での作業など、労働安全衛生法に基づく就業制限や安全管理が関わるため、Level2に挑戦する時期に同時に必要な特別教育や技能講習を済ませておくと、資格取得後にすぐ現場リーダーとして動きやすくなります。

ET Level2を取った後のキャリアと次の一手

ET Level2を取得すると、現場では報告書のサイン権限を持てる立場になり、ETに関わる案件で見積もり段階から呼ばれることが増えてきます。検査会社の中ではプロジェクトリーダーや若手の指導役、メーカー側では品質保証部門や開発部門での品質根拠づくりなど、関わり方の幅が一段広がります。資格手当が設定されている会社では月数千円〜数万円のレンジで処遇に反映される例もあり、給与面でも目に見える変化が出やすい資格です。

キャリアの次の一手としては、ETのLevel3に進んで手順書作成や教育を担う方向、UTやRTなど別の試験種目を取って複合的に提案できる技術者を目指す方向、あるいは検査会社からプラントメーカー・航空・鉄道などの発注側に移って品質保証の専門家として動く方向など、複数の道があります。どの道が自分に合うかは、いまの会社の評価軸、希望する勤務地、出張頻度、家族の状況などによって変わるので、Level2を取った段階で一度キャリアの棚卸しをしておくと、次の3年が描きやすくなります。

ETに限らずNDTのキャリア全体を見直す視点では、関連記事の非破壊検査の資格全体ガイドや、ETそのものの全体像を整理したETの総合ガイド、合格率の傾向をまとめた非破壊検査の合格率の見方もあわせて読むと、Level2取得が自分のキャリアでどの位置にあるのかを掴みやすくなります。

転職するかどうかは、話してから決めれば大丈夫です。今のET経験で見える業界や選択肢を並べ直すだけでも、Level2取得後の次の一手はかなり見えやすくなります。テンキャリの無料キャリア相談では、非破壊検査の領域に絞って業界を見てきた担当者と、ET Level2取得のタイミング、Level3やUT・RTとの順序、検査会社・メーカー・発注側のどこに軸足を置くかといった分岐を、いまの経験と希望条件に合わせて一緒に並べ直せます。

関連記事

  • 鋼材表面の磁束線と整列する磁粉、レベル1から2へ進む段差で表現した磁粉探傷資格取得のコンセプト図

    【2026年版】磁粉探傷試験(MT)資格の取り方と勉強法ガイド

    磁粉探傷試験(MT)の資格を取りたい人へ、JSNDI認証資格Level 1/2の受験資格・訓練時間16〜24時間の要件、一次(学科)と二次(実技)の試験構成、合格までの目安2〜6か月の勉強法、PT・UTなど他の試験種目との位置づけを2026年時点の公開情報をもとに整理しました。

  • 【2026年版】ETレベル3試験の出題範囲・受験資格・勉強法ガイド

    【2026年版】ETレベル3試験の出題範囲・受験資格・勉強法ガイド

    渦電流探傷試験(ET)レベル3試験の出題範囲と求められる理論理解、受験資格・訓練時間の要件、合格に向けた勉強法のポイントを、ETという試験種目の特徴を踏まえて2026年時点で整理しました。レベル2取得者が次の一段に進むための判断材料として、JSNDI の公式情報を起点に解説します。