電験三種で何を監督できるのか:答えは「電圧5万ボルト未満」まで
求人票や社内の推奨資格リストで電験三種の名前を見かけて、何ができる資格なのかを確かめたい人は多いはずです。設備管理やビルメンテナンスの仕事をしていて次の資格を考えている人、工場の電気担当になって選任の話が出てきた人、電気工事士から電気保安の仕事(保安監督)へ移ることを考えている人にとって、最初に知っておきたいのは「どこまで監督できるか」です。
第三種電気主任技術者が保安の監督を行えるのは、電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所を除く)です。電気技術者試験センターの資格概要には、第三種の監督範囲がこの条件で明記されています(電気技術者試験センター「電気主任技術者について」)。第三種は「電気設備なら何でも監督できる資格」ではなく、電圧に上限があり、さらに一定規模以上の発電所は対象から外れる区分です。
第三種を理解するうえでのポイントは、監督範囲・上位区分との差・試験の仕組みの3つです。
- 監督範囲は「電圧5万ボルト未満」と「出力5千キロワット以上の発電所を除く」の2条件で決まる
- 第二種・第一種へ上がると、監督できる電圧の上限が引き上げられる
- 試験は一次試験のみで、理論・電力・機械・法規の4科目を科目別合格制で受ける
第三種電気主任技術者と「電験三種」という呼び名
電気主任技術者は、電気事業法に基づいて事業用電気工作物の工事・維持・運用の保安を監督する国家資格です。事業用電気工作物を設置する者は、保安の監督をさせるために電気主任技術者を選任する義務を負っており、その根拠は電気事業法(昭和39年法律第170号)にあります(e-Gov 法令検索「電気事業法」)。
免状は第一種・第二種・第三種の3区分に分かれ、それぞれの試験の略称が通称として定着しています。電気技術者試験センターも、「電験三種」は第三種電気主任技術者の略称で意味は同一だと説明しています。
- 略称の対応:第一種=電験一種、第二種=電験二種、第三種=電験三種(「電験」は電気主任技術者試験の略)
- 求人票での主な表記:「電験三種」「第三種電気主任技術者」「電気主任技術者(三種)」
- 指しているもの:表記が違っても、いずれも同じ第三種の免状
区分ごとの違いと資格全体の位置づけは、電気主任技術者の選任義務と第一種〜第三種の違いをまとめた記事で全体像を確認できます。
「5万ボルト未満」「5千kW以上の発電所を除く」の2条件をどう読むか

第三種の監督範囲は、電圧の条件と発電所の出力の条件の組み合わせで決まり、どちらか片方だけでは判断できません。
条件1:電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物
1つ目は電圧の上限です。第三種が監督できるのは電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物で、5万ボルトちょうどは含みません。工場やビル、商業施設のように電力会社から高圧で受電する需要設備は、この範囲に収まる代表的な例です。
ただし、どの電圧で受電しているかは設備ごとに異なります。同じ「工場」でも、規模が大きく特別高圧で受電している事業所では、受電電圧によって第三種の範囲を超えることがあります。実務では、受電設備の単線結線図や受変電機器の銘板、電力会社との受電契約に記載された受電電圧を確かめて、自分の免状の範囲に入るかを判断します。
条件2:出力5千キロワット以上の発電所は除く
2つ目は発電所の出力による除外です。電圧が5万ボルト未満であっても、出力5千キロワット以上の発電所は第三種の監督範囲から外れます。発電所については電圧だけで判断せず、出力の大きさも同時に確認する必要があります。
太陽光発電や風力発電などの発電設備に関わる仕事を考えている人は、この除外条件を見落としやすい点に注意が必要です。需要設備(電気を使う側の設備)の感覚で「5万ボルト未満なら三種で足りる」と判断すると、発電所の規模によっては監督範囲の外になります。
範囲を超える設備に当たったとき
電圧5万ボルト以上の設備や出力5千キロワット以上の発電所の保安監督には、第二種以上の免状が必要です。配属や選任の話が出たときに、対象設備の電圧と発電所の出力を具体的に確かめておくことが、自分と職場の両方を守ることにつながります。
監督範囲に上限があっても、第三種の範囲に入る需要設備は数が多く、第三種はそうした設備の保安監督に対応する区分です。
二種・一種へ上がると監督範囲はどこまで広がるか
上位区分ほど、監督できる電圧帯と設備の規模が広がります。電気技術者試験センターの資格概要では、3区分の範囲と試験構成がそれぞれ示されています。
- 第一種:監督できる電圧=すべての事業用電気工作物/発電所の出力による除外=なし/試験構成=一次試験+二次試験
- 第二種:監督できる電圧=17万ボルト未満/発電所の出力による除外=なし/試験構成=一次試験+二次試験
- 第三種:監督できる電圧=5万ボルト未満/発電所の出力による除外=出力5千キロワット以上の発電所を除く/試験構成=一次試験のみ
三種から二種へ進むと、特別高圧で受電する事業所や出力5千キロワット以上の発電所も担当できるようになります。第二種の監督範囲と記述式の二次試験については電験二種の監督範囲と二次試験の構成を解説した記事で詳しく扱っています。
三種の試験は一次試験のみ:理論・電力・機械・法規の4科目
第三種電気主任技術者試験は一次試験のみで構成され、二次試験はありません。一次試験は理論・電力・機械・法規の4科目で、科目別合格制が採られています(電気技術者試験センター「電気主任技術者について」)。2026年時点の受験案内では試験は上期・下期の年2回実施で、令和8年度上期は一次試験のCBT方式が2026年7月16日〜8月9日、筆記方式が8月30日に実施されました。次の令和8年度下期は、申込受付期間が2026年11月9日〜11月26日、一次試験のCBT方式が2027年2月4日〜2月28日、筆記方式が2027年3月21日と案内されています(電気技術者試験センター)。
解答方式は五肢択一で、マークシートに記入する筆記方式か、パソコンで解答するCBT方式で受験します(電気技術者試験センター「第三種電気主任技術者試験について」)。各科目の出題範囲は試験概要で次のように示されています。
理論
電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測が範囲です。直流・交流回路や電磁気といった電気の基礎にあたる科目で、ほかの3科目を解く土台にもなります。
電力
発電所、蓄電所及び変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路の設計及び運用並びに電気材料が範囲です。電気をつくって送る側の設備を扱う科目です。
機械
電気機器、パワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、電熱、電気化学、電気加工、自動制御、メカトロニクス並びに電力システムに関する情報伝送及び処理が範囲です。4科目のなかで列挙されている範囲がもっとも広い科目です。
法規
電気法規(保安に関するものに限る)及び電気施設管理が範囲です。電気事業法をはじめとする保安の法令と、施設管理の計算問題が中心になります。
電験三種の受験者数と合格者数はどのくらいか
電気技術者試験センターは、回ごとの受験申込者数・受験者数・合格者数・科目合格者数を「試験結果と推移」で公表しています。令和7年度(2025年度)の実績は次のとおりです(電気技術者試験センター「第三種電気主任技術者試験 試験結果と推移」)。
- 令和7年度上期:受験者24,766人、合格者3,201人、科目合格者6,859人
- 令和7年度下期:受験者24,176人、合格者3,164人、科目合格者6,680人
- 令和7年度合計:受験者48,942人、合格者6,365人
公表値から計算すると、令和7年度合計の合格者は受験者のおよそ13%にあたります(本稿での算出)。同センターの注記では、受験者数は1科目でも出席した人の合計です。合格者には、過去の科目合格の免除を使って残りの科目を取った人も含まれます。そのうえで、その回に科目合格だけを得た人は、各回とも合格者の2倍前後います。
年度ごとの推移も同じページで公表されています。直近6年度の受験者数と合格者数、そこから算出した比率(本稿での算出)を見ると、年度による振れ幅が分かります。
- 令和2年度:受験者39,010人、合格者3,836人(約9.8%)
- 令和3年度:受験者37,765人、合格者4,357人(約11.5%)
- 令和4年度:受験者62,571人、合格者7,307人(約11.7%)
- 令和5年度:受験者52,735人、合格者9,894人(約18.8%)
- 令和6年度:受験者49,963人、合格者8,181人(約16.4%)
- 令和7年度:受験者48,942人、合格者6,365人(約13.0%)
推移表では令和4年度から上期・下期に分けて集計されており、年2回の実施になった年度から受験者数が大きく増えています。合格者の比率は年度によって1割前後から2割近くまで動いているため、特定の1年だけを見て難易度を判断せず、複数年の幅で捉えるのが実態に近い見方です。
受験手数料は令和8年度の案内でインターネット申込みが7,700円(非課税)です。受験資格や申込方法を含む詳細は回ごとの受験案内に記載されています。試験に合格しただけでは電気主任技術者として選任されることはできず、免状の交付を申請して免状を受け取る必要があります。交付申請の案内は、同センターの「電気主任技術者の免状交付」ページにまとめられています。
科目別合格制を前提にした受験計画の組み方
第三種の試験でとくに押さえておきたいのが科目別合格制です。4科目すべてに一度で合格しなくても、合格した科目はその後の試験で免除を受けられます。試験概要では、最初に合格した試験以降、申請により最大で連続して5回まで当該科目の試験が免除されると定めています(電気技術者試験センター「第三種電気主任技術者試験について」)。年2回実施なので、最初に科目合格した回を含めて6回、期間にするとおよそ3年間の範囲で残りの科目を合格すればよい計算です。
この制度があるため、受験計画は「一度に4科目」と「数回に分けて積み上げる」のどちらでも組めます。働きながら受験する人の場合、次の3通りが代表的です。
- 理論から順に受ける:理論を最初に固め、次に電力・機械へ進み、法規を最後に回す。理論の理解がほかの科目の計算問題に効くため、順序立てて学びやすい
- 得意科目から先に受ける:業務で触れている分野(受変電設備なら電力や法規など)から先に合格を取り、残りの科目に時間を集中する
- 初回は4科目すべて受ける:初回に4科目すべてを受け、合格した科目は次回以降に免除を申請して残りの科目に絞る
どの組み方でも、免除の期限から逆算することが欠かせません。免除が続く回数には上限があるため、最後の科目に届く前に期限が切れると、合格していた科目も受け直しになります。業務の繁忙期や家庭の予定を見ながら、どの回でどの科目を受けるかを最初に大まかに決めておくと、途中で計画が崩れても立て直しやすくなります。
電気工事士・免状更新と混同しやすいポイント
電験三種は電気工事士と混同されやすく、免状の更新の有無も誤解されやすい資格です。
電気主任技術者と電気工事士は別の資格
電気主任技術者は保安監督の資格、電気工事士は電気工事の作業を行うための資格です。電気主任技術者は電気事業法、電気工事士は電気工事士法に基づく別の国家資格で、役割も根拠法も異なります。電験三種を持っていても、それだけで電気工事士の作業ができるわけではありません。一方で電気技術者試験センターの資格概要では、電気主任技術者は実務経験等によって第一種電気工事士や認定電気工事従事者を取得できる資格として案内されており、2つの資格はつながりもあります。
免状に更新制度はない
電気主任技術者の資格には更新制度がなく、一度取得すれば原則有効です(電気技術者試験センター「電気主任技術者について」)。ただし、法令や技術基準の改正、設備の更新は続くため、選任されて保安監督を担う立場では継続的な学習が実務上欠かせません。「更新がない」ことと「学び直しが要らない」ことは別の話です。
電験三種を取ったあと、どの範囲の仕事を目指すか

第三種の範囲で完結する仕事は、高圧で受電する工場・ビル・病院・商業施設などの自家用電気工作物の保安が中心です。選任のされ方には、事業場の従業員として電気主任技術者に選任される形のほか、保安管理業務を外部の事業者や個人に委託する形もあり、電験三種を持つ技術者はどちらの側でも働き方を考えられます。特別高圧で受電する大規模な事業所や出力の大きい発電所に関わりたい場合は、第二種・第一種へ進むことで監督できる範囲が広がります。
立場によって、最初に確かめる設備の条件が変わります。
- 設備管理・ビルメンテナンスの仕事をしている人:担当する建物の受電電圧が5万ボルト未満であれば、第三種はその建物の保安監督に直接つながる資格です。まずは担当設備の受電条件を確かめるところから位置づけが見えてきます
- 工場の電気担当で選任の話が出た人:工場の受電電圧と、構内に発電設備がある場合はその出力を確かめ、第三種の範囲に収まるかを先に確認する必要があります
- 電気工事士から保安監督の仕事へ移りたい人:工事で身につけた受変電設備の知識は、電力や法規の学習と保安監督の判断に活きます。役割は「つくる側」から「保安を監督する側」へ変わります
次の一手を考えるときは、「今の職場で担当する設備の受電電圧と規模はどの区分に当たるか」「将来関わりたい設備はどの区分が必要か」の2点で、第三種で腰を据えるか、上位区分を目指すかの判断が分かれます。選任後の実務がどういうものかは、電気主任技術者の仕事内容と1日の流れをまとめた記事で具体的に確認できます。
資格を取ったあとにどの職場でどう活かすかは、人によって答えが違います。転職するかどうかは、話してから決めれば大丈夫です。担当設備の受電電圧から見て三種で足りる職場か、上位区分を見据えた職場か、受験計画と両立できる働き方か。そうした条件を並べ直したいときは、無料キャリア相談で一緒に整理できます。
