電験とは?受験資格・難易度・区分構成の要点
電気主任技術者試験、通称「電験」を受けようか迷っている人がまず知りたいのは、「自分に受ける資格はあるのか」「どれくらい難しいのか」「何年くらいかかりそうか」の3点だと思います。ビル管理や工場の設備保全、電気工事の現場で働きながら電験を視野に入れ始めた人、これから電気の保安分野で働きたい人に向けて、3点とも、試験を実施する電気技術者試験センターの公表資料で確かめられます。
電験は、事業用電気工作物の工事・維持・運用に関する保安の監督を行う「電気主任技術者」の免状を得るための国家試験です。区分は第一種・第二種・第三種の3つで、どの区分も一次試験は理論・電力・機械・法規の4科目、第一種と第二種にはさらに2科目の二次試験があります。
電験は受験資格の制限がなく誰でも受けられる一方で、第三種でも合格率が1割台前半にとどまる試験です。一次試験は4科目の科目別合格制なので、何年かに分けて合格を積み上げる受け方が現実的な選択肢になり、第三種(電験三種)なら年2回の試験を使って1年半〜3年ほどの計画を組むことができます。
試験を実施しているのは一般財団法人 電気技術者試験センターです。試験日程や受験案内、試験結果の公表値はすべて同センターの公式サイトで確認できます。この記事の数値や日程もセンターの公表資料をもとにしていますが、日程や方式は年度ごとに見直されるため、申し込む前には最新の受験案内で確かめてください。
電気主任技術者という資格そのもの(選任義務や、区分ごとに監督できる電気工作物の範囲)を先に押さえたい場合は、電気主任技術者の制度全体をまとめた記事から読むと、この記事の内容がつながりやすくなります。
電験の受験資格:学歴・年齢・実務経験の条件はあるか
結論として、電験の受験に学歴・年齢・実務経験の条件はありません。電気技術者試験センターの令和8年度 第三種電気主任技術者上期試験の受験案内にも、受験に対して制限や条件はなく、どなたでも受験できると明記されています。電気系の学校を出ていない人や、実務経験のない学生・社会人でも、申し込めばそのまま受験できます。
ここで誤解しやすいのが、「条件がない=入りやすい試験」ではないという点です。受験の門戸が広いぶん、合否はほぼ試験の得点だけで決まります。電気の実務経験が長い人でも、理論や機械の計算問題、法規の条文知識は試験のために学び直す必要があり、経験がそのまま得点になるわけではありません。経験の長さより、試験範囲を学び直した量が結果を左右します。
免状を得るルートは試験合格だけではありません。電気事業法第44条第2項第1号と前掲の受験案内にもとづくと、ルートは次の3つです。
- 試験ルート:電験に合格して免状の交付を申請する(受験資格の制限なし)
- 認定校ルート:経済産業大臣の認定を受けた学校(認定校)で所定の単位を修得して卒業し、所定の実務経験を積んで、試験を経ずに免状の交付を申請する
- 単位不足者の科目受験:認定校を卒業したが単位が足りない人が、不足単位に相当する試験科目だけを受験して合格し、その単位を修得したとみなされたうえで認定校ルートの申請に進む
自分の出身校が認定校かどうか、所定の単位を修得しているかどうかは、卒業した学校に問い合わせるか、学校が発行する「履修単位証明書(電験用)」で確認する流れです。実務経験の年数などの詳細は、各地域の産業保安監督部(署)の電力安全課が窓口になります。電気系の学科を卒業している人は、試験ルートと認定ルートのどちらが早いかを最初に比べておくと、遠回りを避けられます。
区分で試験はどう違う?年2回の第三種と二段階の第一種・第二種
電験の3区分は、監督できる範囲だけでなく試験の構成も違います。電気技術者試験センターの電気主任技術者の資格概要によると、第一種と第二種は一次試験と二次試験があり、第三種は一次試験のみです。違いは試験の段階の数と、年に何回受けられるかの二点に表れます。
第三種:一次試験のみ・年2回
第三種(電験三種)は一次試験の4科目に合格すれば試験は完了です。試験は上期と下期の年2回実施されており(第三種電気主任技術者試験のページ)、1年のうちに2回挑戦できます。監督できる範囲は電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所を除く)で、ビルや工場、中小規模の発電設備など、求人数の多い職場の多くがこの範囲に入ります。
第二種・第一種:一次試験+二次試験・年1回
第二種(電験二種)と第一種(電験一種)は、一次試験に合格したうえで二次試験に進む二段階の構成で、試験は年1回です。二次試験は「電力・管理」と「機械・制御」の2科目で、計算過程や考え方を書かせる記述方式になります。監督できる範囲は、第二種が電圧17万ボルト未満、第一種がすべての事業用電気工作物です。
第三種は年2回受けられるため、同じ「4科目の一次試験」でも、第三種のほうが合格を積み上げるペースを速くできます。一方、第一種・第二種は年1回のうえ二次試験の記述対策も必要になるため、計画は年単位で組むことになります。第二種の試験構成と監督範囲をもう少し詳しく知りたい場合は、電験二種の監督範囲と二次試験の構成を解説した記事を参照してください。
一次試験は何が出題され、CBTと筆記はどう選ぶ?

一次試験は、3区分とも理論・電力・機械・法規の4科目で構成されています。第三種電気主任技術者試験の概要では、4科目の出題範囲が次のように定められています。
- 理論:電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測
- 電力:発電所、蓄電所及び変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路の設計及び運用並びに電気材料
- 機械:電気機器、パワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、電熱、電気化学、電気加工、自動制御、メカトロニクス並びに電力システムに関する情報伝送及び処理
- 法規:電気法規(保安に関するものに限る。)及び電気施設管理
機械は扱うテーマの幅が特に広く、理論は他の3科目の計算問題の土台になる科目です。電力には「蓄電所」が明記されており、再生可能エネルギーや蓄電設備の広がりが出題範囲にも反映されています。法規は電気法規に加えて電気施設管理も範囲に含まれているため、条文の暗記だけで済む科目と考えないほうが安全です。これらの科目は選任後の仕事とも切り離されたものではなく、一般に、法規と電気施設管理は保安規程にもとづく点検や記録の運用に、電力と機械は受変電設備や発電設備の保守の場面につながる知識と考えられます。試験のための暗記ではなく、将来の業務の基礎として学ぶ意識を持つと、学習の優先順位もつけやすくなります。
出題形式は、第三種が五肢択一です。解答方法はマークシートに記入する筆記方式か、パソコンで解答するCBT方式のどちらかで、前掲の受験案内によると令和8年度(2026年度)からは受験申込みの時点でCBTか筆記かを選ぶ方式になりました。CBT方式を選んだ場合は、申込みとは別に、決められた予約期間内に自分でマイページからCBT会場を予約する必要があります。期間内に予約が完了しないと、CBT方式・筆記方式のどちらでも受験できず、受験手数料も返金されない扱いです。
どちらを選ぶかは、受験できる日の自由度と、紙で問題を解く慣れのどちらを優先するかで考えるとよいでしょう。CBT方式は試験期間の中から都合のよい日と会場を選べるため、シフト勤務や出張の多い人には予定を合わせやすい方式です。筆記方式は試験日が1日に決まっていて、問題用紙に書き込みながら解けるため、紙の過去問で練習してきた人には慣れた環境で臨めます。第二種・第一種の一次試験は、多肢選択方式のマークシートで実施されます。
電験三種の合格率はどれくらい?公表値で見る難易度
電気技術者試験センターが公表している第三種電気主任技術者試験の試験結果と推移によると、2025年度(令和7年度)の上期と下期を合計した第三種の合格率は約13%(2025年度)で、受験した人のおよそ8人に1人が4科目の合格にたどり着いた計算です。上期と下期に分けても、合格率はほぼ同じ水準です。
- 上期:受験者24,766人、合格者3,201人(約12.9%)
- 下期:受験者24,176人、合格者3,164人(約13.1%)
- 年度合計:受験者48,942人、合格者6,365人(約13.0%)
- 科目合格者(年度合計):13,539人
年2回実施でも、1回あたりの合格水準は下がっていません。一方で、4科目のうち一部の科目だけに合格した科目合格者は合格者の2倍を超えており、第三種は1回で4科目をそろえる人より、科目合格を持ち越しながら複数回で仕上げる人のほうが多い試験です。合格率の13%という数字だけで身構えるより、科目合格を積み上げる前提で、何回で4科目をそろえるかを決めるのが現実的です。
なお、合格者数や受験者数は年度ごとに変わります。ここで挙げた数値は2025年度の実績であり、受験する年度の難易度をそのまま示すものではありません。受験前には、試験結果ページで最新年度の数値を確認してください。第一種・第二種は二次試験の記述方式が加わるため、第三種とは別の難しさがあり、同じ物差しでは比べられない点にも注意が必要です。
科目合格の持ち越しは「回数」で数えるか「年度」で数えるか
一次試験は科目別合格制で、4科目のうち一部だけ合格した場合は「科目合格」となり、その科目は一定期間の試験が免除されます。資格概要では、科目別合格制なので有効期限の3年間を使って勉強する方法も採れると説明されています。ただし、この「3年間」の数え方は区分によって違います。
第三種:最大で連続5回まで
第三種は、最初に合格した試験以降、申請により最大で連続して5回まで、その科目の試験が免除されます(第三種試験の概要)。年2回実施なので、最初に合格した回を含めた6回分、およそ3年間のうちに4科目をそろえればよい計算です。数え方は「回数」で、しかも「連続して」の5回なので、仕事の都合で受験を見送った回があっても期限は進んでいくものとして計画しておくのが安全です。
第二種・第一種:翌年度と翌々年度
第二種と第一種の一次試験は、科目合格した翌年度と翌々年度の試験で、申請により免除されます(第二種試験の概要・第一種試験の概要)。こちらは「年度」で数えます。資格概要の「有効期限の3年間」は、合格した年度を含めた3年度にあたります。
二次試験には科目別合格制度がありません。「電力・管理」と「機械・制御」の2科目は、同じ回にそろえて合格する必要があります。その代わり、一次試験に合格した年度の二次試験で不合格になった場合は、翌年度の一次試験が免除され、もう一度二次試験に挑戦できます。二次試験に挑める機会は、一次試験に合格した年度とその翌年度の2回と考えておくと計画が立てやすくなります。
科目合格の期限が切れると、合格済みの科目も再び受験が必要になり、その回に取りにいく科目が増えて1回あたりの学習量が重くなります。
申込みから免状交付までどう進む?2026年度上期の日程で確認

令和8年度 第三種電気主任技術者上期試験の受験案内に載っている日程を例にすると、流れは次の順になります(日程は年度・上期/下期ごとに変わります)。
- 受験申込み期間:5月18日(月)〜6月4日(木)
- CBT会場の予約期間:6月11日(木)〜7月12日(日)(CBT方式を選んだ人のみ)
- CBT方式の試験期間:7月16日(木)〜8月9日(日)
- 筆記方式の試験日:8月30日(日)
申込みから試験までおよそ2〜3か月あり、CBT方式を選ぶ人はその間に会場予約という手続きが一つ増えます。申込み期間は3週間ほどと短いので、受験を決めたら公式サイトの案内が出る時期を早めに確認しておくと安心です。
試験に合格すると、所要の手続きを経て経済産業大臣から免状が交付されます。電気技術者試験センターは経済産業大臣から免状の交付事務も受託しており、試験合格者の免状交付申請は同センターが窓口です。受験案内に記載されている交付手数料は2,350円(非課税)です。認定校ルートで申請する場合は、窓口が各地域の産業保安監督部(署)電力安全課等になり、交付手数料も6,600円と異なります。
免状を受け取った後は、更新の手続きはありません。資格概要にあるとおり、電気主任技術者の資格には更新制度がなく、一度取得すれば原則有効です。定期的な講習の受講や書き換えを前提に計画を立てる必要はありませんが、選任された職場では設備や法令の変化に合わせた知識の更新が求められるため、取得後の学びが不要になるわけではありません。
どの区分から受けるか、何年で計画するか
多くの人にとって現実的なのは、第三種から始める道です。前述の第三種の監督範囲に一般的なビルや工場、商業施設の受変電設備の多くが含まれ、ビル管理や設備保全の職場で求められる場面が多い区分だからです。
第三種の計画は、科目合格の持ち越し期間(連続5回)に収まるように組みます。1回目で理論と法規、2回目で電力、3回目で機械というように、科目の性質と自分の得意不得意に合わせて配分すると、1回あたりの学習量を抑えながら進められます。理論は他科目の計算の土台になるため、早い回で取りにいく計画が立てやすい科目です。
年数に直すと、第三種を3回で4科目そろえる計画なら、年2回の実施でおよそ1年半です。科目合格の持ち越し上限である連続5回を使い切る場合は、最初に科目合格した回からおよそ3年間が上限の目安になります。第二種・第一種は、一次4科目を1年度でそろえ、同じ年度の二次試験に合格すれば最短1年度で終わります。一方、一次を科目合格の持ち越しで3年度かけてそろえ、二次試験の2回目の機会(一次合格の翌年度)で合格する場合は、4年度ほどを見込むことになります。仕事と両立しながら受ける場合は、この幅のどこに自分を置くかを最初に決めておくと、1回ごとの学習量を見積もりやすくなります。
第三種を取った後に上位区分を目指す道も二つあります。一つは第二種・第一種の試験を受ける道、もう一つは実務経験による道です。受験案内によると、第三種の免状取得者は、電圧1万ボルト以上の電気施設で5年以上の保安監督の実務を経験することにより、第二種電気主任技術者の資格を得ることができます。二次試験の記述対策に時間を割くか、実務を積みながら上位区分を得るかは、今の職場で扱う設備の電圧や、今後どの規模の設備に関わりたいかで判断が分かれます。
なお、電気主任技術者は電気設備の保安を監督する資格で、電気工事の作業そのものを行うための資格である電気工事士とは別の国家資格です。電気工事の作業に就くことが目的なら、電気工事士の取得を先に考えるほうが合う場合もあります。目指す仕事が保安の監督なのか工事の作業なのかによって、次に調べるべき資格そのものが変わります。
資格の先の働き方まで含めて考えるなら
電験は、合格までに複数回・複数年を見込むことの多い試験です。だからこそ、合格した後にどんな職場でどの区分を活かしたいかを先に描いておくと、区分の選び方や科目の配分、仕事と勉強の両立の仕方まで決めやすくなります。
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