ET Level 1 の取り方|受験資格と勉強法【2026年版】

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ET Level 1 の取り方|受験資格と勉強法【2026年版】
目次

ET Level 1 はどんな資格か

この記事は、渦電流探傷試験(ET、Eddy Current Testing)の Level 1 を取得しようと考えている技術者と、これから非破壊検査の世界で ET を入口に資格を組み立てたい人のために書いています。

結論から言うと、ET Level 1 は、一般社団法人日本非破壊検査協会(JSNDI)が JIS Z 2305 に基づいて運用する「非破壊試験技術者資格認証制度」のうち、渦電流探傷試験(ET)部門の最初の段階に位置する資格です。Level 1 から Level 3 まで段階があり、Level 1 は「上位資格者の指示書に従って試験を実施し、所定の手順で結果を記録する」ことが期待される技能を持つ人を認証する区分です。試験設備の調整や合否判定そのものは Level 2 以降の業務にあたり、Level 1 の段階では「指示書通りに正しく試験を回せる技術者」として求められると理解しておくと、後の勉強法や仕事の組み立てがぶれません。

同じ JIS Z 2305 系の資格でも、UT(超音波探傷)や RT(放射線透過)といった主流方式と比べると、ET は電磁誘導の挙動を理解した上で、表面から表層の微細な傷や材質変化を素早くスクリーニングする用途に強みがあります。プラント配管や熱交換器のチューブ検査、航空機の翼や構造部品の表面欠陥検査などで採用が進んでおり、ET の有資格者は現場での需要に対して人数が少なめという声も技術者の間でしばしば聞かれます。Level 1 は、その入口に立つ資格と考えてよい位置です。

ET Level 1 を考えるときに押さえる論点は、受験資格・試験内容・勉強法・費用・キャリア・安全前提の 6 つで、いずれも 2026 年時点で公開されている JSNDI の認証要綱が起点になります。

ET Level 1 の受験には何が必要か:受験資格と訓練時間

ET Level 1 の受験には、年齢や学歴の制約は基本的にありませんが、誰でもすぐに申し込めるわけではなく、所定の訓練時間と、申請時点までに積み上げた実務経験の要件をクリアする必要があります。受験を意識し始めた段階で、まず公式の最新数字を一度確認するのが安全です。具体的な時間数は JSNDI 公式の資格認証ページ に各部門ごとの最新値が掲載されており、ET 部門も同じ体系の中で公開されています。

申請にあたって押さえる主な要件は以下の 4 点です。

  • 年齢・学歴の制約は原則なし(部門ごとに最低条件の確認は必要)
  • JSNDI が認定した訓練コースの所定時間を受講していること
  • ET 部門の補助業務など、上位者の指示の下での実務経験を所定期間積んでいること
  • これらを申請時点で満たしていること(試験日基準ではない)

訓練時間の数え方と運用

訓練時間は、JSNDI が認定した訓練コースを受講した時間でカウントするのが基本で、独学だけで時間要件を満たす設計にはなっていません。Level 1 から実機実習が組み込まれており、装置調整と手技を実機で確認することが制度の前提になっています。2026 年度の訓練コースは、JSNDI 公式情報を見る限り Level 1 で十数時間〜数十時間規模が一般的で、上位 Level に進むほど積み上げ時間が増えていく構造です(正式な時間数は受験する年度の最新要綱で必ず確認してください)。年度の途中から定員が埋まり始めることが多いので、受験する年の前半までに席を確保しておくと、後の予定が組みやすくなります。

実務経験の積み方

実務経験は、ET 部門の試験を補助した経験や、上位者の指示の下で ET 試験に従事した期間を指します。期間の数え方には公式に細かい運用ルールがあり、勤務形態や雇用主の証明が必要です。在職中で ET の業務に触れる機会がある人は、上司や品質管理部門に「ET Level 1 の実務経験要件をどう積み上げるか」を早い段階で相談しておくと、申請時に書類で慌てずに済みます。会社で ET の仕事がほぼないなら、関連会社や協力会社での補助業務を一定期間引き受けて経験を積む選択肢もあります。

申請時点を起点に逆算する

受験を考え始めた時点で、訓練コースの空き、申請書の発行リードタイム、自社内の実務経験証明のフローを並べて、半年から 1 年単位で逆算するのが現実的なところです。試験日に間に合わせる感覚で受講を始めると、訓練修了証や実務経験の証明発行に時間がかかり、間に合わないケースもあります。

ET は他の表面検査とどう違うのか

ET(渦電流探傷試験)は、電磁誘導を使って試験体表面の渦電流の変化を信号として検出する非破壊検査手法です。コイルに高周波電流を流して試験体表面に渦電流を誘導し、その渦電流の変化を電気信号として読み取ることで、表面から表層の傷や組織変化、寸法変動を検出します。表現を変えれば、電磁誘導で表面を電気的に触って状態を読み取る検査だとも言えます。

同じく表面欠陥を見つける手法である MT(磁粉探傷)や PT(浸透探傷)と並べると、得意領域が次のように分かれます。

  • 検出対象: ET は表面〜表層の傷と材質変化、MT は強磁性体の表面・表層割れ、PT は表面開口欠陥
  • 接触の必要性: ET は非接触で走査可、MT/PT は前処理(磁化・浸透剤塗布)が必要
  • 自動化との相性: ET は信号処理が電気的なため自動化に向く、MT/PT は目視判定中心で自動化しにくい
  • 深さ方向の感度: ET は周波数で表層の深さを調整可、MT/PT は表面〜ごく浅い表層に限定

一方で、ET は表皮効果によって深部の欠陥は検出しにくく、感度は周波数や材質、リフトオフ(プローブと試験体の距離)に強く影響されるため、装置の調整と参照標準試験片の理解がそのまま結果の質に直結します。Level 1 の段階でも、感度設定の意味、周波数選定の理屈、リフトオフ補償の効き方といった基礎は触れることになり、ここを単なる装置操作の話と思わずに「電磁誘導の挙動の話」として理解しておくと、後の Level 2 の合否判定にも効いてきます。

適用先は分野ごとに大別すると下のようになります。

  • プラント系: 熱交換器・復水器のチューブ検査、配管表面の腐食ピットの早期検出
  • 航空機・輸送機器系: 機体構造部品やボルト穴周辺の表面欠陥探傷
  • 部品・材料判別系: 導電性材料の材質判別、熱処理状態の確認、めっき厚の評価

プラント定期検査では、UT と組み合わせて、UT で板厚と内部、ET で表面と材質を分担する運用も一般的で、ET の有資格者は UT との掛け合わせで現場価値が大きくなる傾向があります。

試験の構成と Level 1 で問われる範囲

JSNDI の Level 1 試験は、おおよそ次の 3 軸で構成されています。

  • 一般試験(基礎知識): 非破壊検査全般の基礎、JIS や規格の体系、安全に関する基本事項
  • 専門試験(部門固有の知識): ET の原理、装置構成、適用範囲、欠陥指示の読み方
  • 実技試験: 実機での走査・記録、参照試験片による校正、指示書通りの手順実行

一般試験では、JIS Z 2305 の体系、各種試験法の比較、保護具と作業環境のリスク、不適切な記録が現場でどう扱われるかといった、部門共通の基礎が幅広く問われます。専門試験は ET 固有の物理と装置運用に絞られ、実技試験は指示書通りに作業できるかを実機で確認する構成です。Level 1 で求められるのは「上位者の指示書を理解して、その通りに作業できる」深さで、合否判定や検査条件の最適化までは Level 2 以降の役割になります。

現場感覚で補足すると、熱交換器のチューブ検査では 1 本あたり数十秒で挿抜走査を回すので、感度のずれやリフトオフの揺らぎがあると記録が読めない状態になりがちです。Level 1 のうちは速さよりも、参照試験片で同じ感度を再現できる手の動きを身に付けるほうが、後で効いてきます。

合格率は年度や部門で変動しますが、ET Level 1 は電磁気の基礎が頭に入っていれば実技は標準的、入っていないと専門試験で苦戦する、という構図になりがちです。物理的な原理を一度自分の言葉で説明できるかどうかが、合否を分ける一つの目安と言ってよさそうです。非破壊検査資格の合格率に関する記事 も参考にしながら、自分が ET 部門のどこで詰まりやすいかを把握しておくと、勉強配分が組みやすくなります。

合格に向けた勉強法のポイント

ET Level 1 の勉強は、ざっくり「電磁誘導の物理を腹落ちさせる」「装置と指示書の用語を引きで読めるようにする」「実技で手が動く状態にする」の三段構えで進めるのが効率的です。順番が大事で、物理の基礎を後回しにすると、装置の設定値が呪文に見えてきて、実技でも応用が効きません。最初の数週間は、市販の電磁気の入門書と、JSNDI が出している ET 部門のテキストを並行して読むのが取り組みやすい入り方です。

テキストの使い方

JSNDI の ET 部門のテキストは Level 1 から Level 3 まで通しで使える設計になっており、最初は太字や図表だけでもよいので一通り目を通してから、過去問題集で問われやすい範囲に印を付けて読み返す方法が効率的です。教科書を端から読み込もうとすると挫折しやすいので、過去問から該当章へ戻り、もう一度過去問という回し方を基本動作にすると進みが安定します。

過去問題集の使い方

JSNDI が公開・販売している過去問題集は、Level 1 でも年度ごとに傾向の差があります。1 年分だけ解いて満足せず、最低でも直近 3 から 5 年分は解いて、間違えた問題はテキストの該当ページにマークを戻す運用にすると、苦手分野が可視化されます。問題を解くこと自体が目的ではなく、間違いを通じて、自分が誤解しているモデルを見つけて修正するのが本来の使い方です。

実技試験への備え方

実技試験は、訓練コースの実習時間で触れる装置と、本番の試験会場で使う装置が完全に同じとは限らないため、装置メーカーごとの違いに振り回されないよう ET 装置の共通の作法を意識すると安定します。プローブの校正、ゲイン設定、フィルター、表示モードといった共通項目を、装置によらず自分で言語化できるようにしておくと、本番で使う装置が初見でも落ち着いて対応できます。指示書の用語と設定値の意味を読める程度までは、Level 1 のうちに整えておく必要があります。

独学と講習の組み合わせ

受験資格を満たすためには訓練コースの受講が事実上必要なので、独学だけで Level 1 まで到達するのは現実的ではありません。むしろ講習で土台を作り、講習前後の独学で応用と過去問対策を埋める組み合わせが現実的です。会社の費用負担で受講できる場合は、講習日程と業務スケジュールの調整を早めに動かすのが、時間コストを小さくする入り方になります。

ET Level 1 取得にかかる費用と期間はどれくらいか

ET Level 1 の取得にかかる費用は、次の 4 項目に分けて見積もるのが分かりやすいです。いずれも目安レンジで、JSNDI 公式案内および勤務先制度で確定値を確認してください。

  • 訓練コース費用: 最大コスト。会社負担なら自己負担はゼロ〜数万円台、自費受講なら十数万円台になりやすい
  • 受験料: 一般試験・専門試験・実技試験の合算で、数千円〜数万円のオーダーになりやすい
  • テキスト・過去問代: 数千円〜1 万円台が目安
  • 交通費・宿泊費: 地方在住で会場が遠い場合は数万円規模になることもある

逆算スケジュール

スケジュール面では、訓練コースの空き状況、受験申請の締切、試験日が年度ごとに固定されているため、受験を決めた瞬間からどの試験を狙うかを確定して逆算するのが鉄則です。受験申請から合否確定までを含めると、勉強開始から認証カード発行までは半年から 1 年を見ておくと安全です。年度をまたぐ場合は、訓練修了証や実務経験証明の有効期限にも注意してください。

会社制度との連動

費用と時間を会社が見てくれるかどうかは、所属企業の資格手当制度と直結します。資格手当が月額で支給されるか、合格時の一時金が出るかで、Level 1 取得の経済的なリターンは数年単位で変わります。自社の制度を一度棚卸ししておくと、Level 2 以降に進むかどうかの判断もぶれにくくなります。業界全体の年収水準を比較したいときは、厚生労働省の賃金構造基本統計調査 の最新公開分を職種別に確認すると、客観的な参照点が得られます。

ET Level 1 を取った後どんなキャリアになるのか

ET Level 1 を取った直後の現場での扱いは、ET 試験を担当するチームに配属可能な技術者として認識される段階です。指示書を理解して試験を回す役割が中心で、装置の校正や走査のスキルを実機で磨く時期になります。ここで丁寧に経験を積むと、Level 2 受験時に問われる「指示書を作る側」の視点が自然に身に付きます。

Level 2 への道筋は、Level 1 取得後に必要な実務経験期間を満たし、Level 2 用の訓練時間を追加で受講して受験するのが基本パターンです。Level 1 取得から Level 2 受験までの期間をどれくらい取るかは個人差がありますが、現場で ET の指示書を「読める」だけでなく「書ける」感覚が出てくるまでは、Level 2 を急いで取っても扱いきれない可能性があります。先に手技と判断のセンスを積み上げてから Level 2 に進む順序が、長い目で見て遠回りになりにくい組み立てです。

キャリア全体で見ると、ET 単独より UT との二刀流や、UT/ET/MT/PT の複数部門化に進む技術者が現場では強く、求人や年収のレンジも広がりやすい傾向があります。渦電流探傷試験(ET)の総合ガイド非破壊検査資格の総合ガイド を組み合わせて、ET Level 1 取得後の自分の立ち位置を地図上に置き直してみてください。

ET の現場ではどんな安全管理が必要か

ET 試験そのものは放射線を使わないため、RT のような被ばく管理は不要ですが、検査対象が高所、狭隘部、高温機器、回転体などになるため、現場での安全管理は他の非破壊検査と同等に重要です。労働安全衛生法は、こうした検査作業に従事する技術者の安全管理の基本となる法律で、就業制限や作業手順、健康管理の枠組みを定めています。現場での具体的な安全教育は、e-Gov 法令検索の労働安全衛生法 をベースに、各事業者がリスクに応じて積み上げる構造になっています。

Level 1 の段階では、自分の試験範囲だけでなく、同じ現場で並行して走る他工程の安全にも目が向くと、上位資格を狙う段階で評価されやすくなります。検査作業中に動力源を停止すべきかどうか、フランジを開けてよい条件は何か、近接で溶接や塗装が走っている場合の注意点はどうかといった現場感覚は、教科書ではなく現場と先輩の指示で身に付いていく部分です。

ET Level 1 を取るかどうかの判断材料

読者類型ごとに ET Level 1 を取るかどうかの判断材料を並べます。

  • UT や RT を持っている人: 表面検査の引き出しを増やせるため、コストパフォーマンスのよい一手になりやすい
  • 未経験で実務経験がない人: 訓練時間と実務経験の要件があるため、まず実務に入る経路を確保するのが先で、Level 1 はその後の話
  • 主力検査が UT や RT 中心の現場の人: ET 出番が限定的なら、現職の主力部門の Level 2 を厚くするほうが業務評価につながりやすいケースもある
  • 熱交換器・航空機系で ET 需要が増えている職場の人: Level 1 を持っている人と持っていない人で任される範囲が変わってくる

自社の検査ポートフォリオと、自分が今後関わりたい業界を並べて見ると、ET Level 1 が「次に取るべき一枚」かどうかが見えてきます。

転職や異動を視野に入れているなら、ET Level 1 だけで判断せず、業界全体での自分の市場価値の見え方を一度言語化しておくと、次の意思決定がずれにくくなります。テンキャリでは、非破壊検査専門のキャリア相談員が、保有資格と実務経験から今の市場での選択肢を整理する 無料キャリア相談 を提供しています。転職するかどうかは話してから決めれば大丈夫で、今の経験で見える業界や選択肢を並べ直すだけでも、次の一手はかなり見えやすくなります。

ET Level 1 を取るにしても、別の手法を先にするにしても、選択肢を一度並べてから決めれば後悔は減ります。

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