放射線透過試験(RT)の資格はどう取る?レベル2の要件と透過写真の勉強法

X線装置で撮影した溶接部の透過写真を観察器に掛け、教本と並べて読み取りを学ぶ構図
目次▼

放射線透過試験(RT)の資格は訓練・試験・実務経験の3つの要件で取る

放射線透過試験(RT、Radiographic Testing)の資格を取りたいと考えて調べ始めると、訓練時間、一次試験、二次試験、実務経験、認証、更新と、似たような言葉が次々に出てきて、どこから手を付ければよいのか分かりにくいはずです。これから RT の資格を取ろうとしている方、すでに現場で撮影の補助をしていて次にレベル2を目指したい方にとって、どこから手を付けるかの答えは単純で、要件が3つに分かれているので順番に満たしていけば迷いません。

RT の資格は、次の3つの要件がそろったときに認証されます。

  1. 決められた時間の訓練を受ける
  2. 一次試験(筆記)と二次試験(実技)に合格する
  3. 必要な月数の実務経験を満たす

国内でこの資格の認証を行っているのは日本非破壊検査協会(JSNDI)で、制度は JIS Z 2305 に基づいています。資格の体系と受験の窓口は JSNDI の資格・認証のページにまとまっています。

RTは他の非破壊検査の方法と何が違うのか

X線が溶接部を透過し、内部の気孔が下のフィルムに黒い点として写る断面イラスト

JIS Z 2305 の資格は、超音波探傷試験(UT)、磁粉探傷試験(MT)、浸透探傷試験(PT)、渦電流探傷試験(ET)などと並んで、RT も独立した「方法」として試験と認証が行われます。つまり RT の資格は RT のためだけのもので、UT を持っていても RT の仕事はできません。逆に言えば、同じ非破壊検査でも方法ごとに勉強の中身がかなり変わります。

RT の特徴は、X 線やガンマ線を検査対象に透過させ、フィルムやイメージングプレートに写った像の濃淡から内部の状態を読み取る点にあります。溶接部の内部にできるブローホールやスラグ巻き込みのように、厚み方向に体積を持つきずを像として残せるのが強みで、像が記録として残るため、検査後に第三者が同じ像を見直せます。その一方で、割れのように薄く広がるきずは、放射線の当たる向きによって写り方が大きく変わります。

この性質がそのまま試験の出題に表れます。他の方法と比べると、物理と計算の比重が高く、さらに「像を見て判断する」という目の訓練が要るのが RT の試験の特徴です。

もう一つの違いは、放射線を扱うために法令上の管理がついて回ることです。JIS Z 2305 の資格とは別に、エックス線作業主任者などの国家資格や被ばくの管理が関わってきます。RT の仕事内容や年収まで含めた全体像は 放射線透過試験(RT)の総合ガイドで扱っています。

RTの受験に必要な訓練時間はレベルごとに何時間か

レベル2の訓練時間を方法別に比べた棒グラフ。RT・UTは80時間で、ET48時間、MT・PT24時間より長い

RT の試験を受けるには、まず決められた時間の訓練を受けていることが条件になります。訓練時間は方法とレベルで決まっていて、JSNDI の JIS Z 2305 認証制度の案内(GA1、2026年7月1日版)の表に定められています。RT の場合、レベル2は訓練 80 時間・実務経験 9 か月が基準です。

レベル1から順に上がるか、レベル1を持たずにレベル2を受ける「直接受験」にするかで、必要な時間が変わります。数値は同版の表によるもので、改定されることがあるため受験前に最新版を確かめておくと安心です。

方法とレベル

訓練時間

実務経験

RT レベル1

40時間

3か月

RT レベル2

80時間

9か月

RT レベル2(直接受験)

120時間

12か月

RT レベル3

40時間

18か月・36か月

RT の訓練時間は、他の方法と比べても長い部類に入ります。RT と UT は放射線や音波の物理、装置の調整、記録の評価まで学ぶ範囲が広いため、訓練も実務経験も長めに設定されていると考えられます。

方法

レベル2の訓練時間

レベル2の実務経験

RT・UT

80時間

9か月

ET

48時間

9か月

MT・PT

24時間

3か月

訓練時間には、JSNDI や訓練機関が開く講習を受ける方法のほか、所属する会社の社内訓練を充てる方法もあります。どの訓練が要件として認められるか、記録をどう残すかは GA1 に書かれているので、受講前に勤務先の教育担当と確認しておくと手戻りがありません。訓練時間のほかに近方視力と色覚の条件もあり、RT は像の細かな濃淡を見分ける方法なので、この条件も GA1 で合わせて確認しておきたいところです。方法ごとの訓練時間を一覧で比べたい場合は 非破壊検査の資格一覧と難易度も参考になります。

合格しても実務経験が足りないと認証されない

RT の資格でつまずきやすいのが、試験の合格と資格の認証は別だという点です。試験に受かっても、必要な月数の実務経験が足りなければ、名刺や報告書に書ける資格にはなりません。

RT の実務経験の月数は GA1 の表で定められています。レベル3の経験月数は学歴で分かれ、工学や科学を2年以上学んだ学歴がある場合は 18 か月、それ以外は 36 か月です。ここでいう経験は、RT の業務に実際に従事した期間を指します。

経験月数の数え方は GA1 の該当節に定められています。現場に入ったばかりの方は、受験の申請前に「自分の経験がいつ何か月に達するか」を勤務先と確認しておくと、合格から認証までの見通しが立てやすくなります。とくに RT は放射線を扱うため、配属されても最初は撮影の補助や暗室作業から始まることが多く、経験として数えられる業務の範囲も確かめておきたいところです。

RT レベル1から受けるか、レベル2に直接挑むか

RT の資格をどのレベルから取るかは、いまの実務経験と、この先の仕事で求められる役割で決めるのが現実的です。レベル1は、決められた手順書や指示書に従って撮影や記録を行う立場の資格です。レベル2になると、指示書をつくる側に回り、撮影条件を決め、透過写真の結果を規格に照らして合否を判定する立場になります。検査会社の求人で「RT レベル2」が条件に挙がりやすいのは、この判定と報告を任せられるかどうかが現場の人員配置に直結するためです。

表の数値を足し合わせると、レベル1から段階的に取っても合計は訓練 120 時間・経験 12 か月で、レベル2の直接受験と同じです。違いは、途中でレベル1という区切りを持つかどうかです。

段階的に上がる道が向いているのは、現場に入って間もなく、まずは撮影の補助や記録の担当として資格を名乗れる状態をつくりたい方です。レベル1の試験で筆記と実技の形式に一度慣れておけるのも利点です。一方、すでに RT の業務に1年近く関わっていて、判定や報告まで任されつつある方は、直接レベル2を目指したほうが受験の回数と申請の手間を減らせます。

所属によっても、レベル2を求められる時期の感じ方は変わります。検査会社に所属して外部の現場を回る立場では、発注者に提出する報告書の判定者としてレベル2が求められる場面が多く、早めに判定まで任されやすい傾向があります。製造や施工の側で社内検査を担う立場では、自社製品の検査手順に沿った撮影が中心になり、判定や指示書づくりは限られた人に集まることもあります。自分がどちらの立場で RT に関わっているかで、レベル2が必要になる時期は変わってきます。

迷ったときは、勤務先が自分にいつまでに何を任せたいかを聞いてみるのが近道です。判定まで任せたい時期が近いなら直接レベル2、まだ先なら段階的に、という決め方で大きく外れることはありません。

一次試験と二次試験ではRTの何が問われるのか

JIS Z 2305 の試験は、筆記の一次試験と、実技の二次試験に分かれています。一次試験は、非破壊検査全般の基礎を問う一般試験と、RT の原理や手順を問う専門試験で構成されます。GA1 では合格基準を 70% と定めており、一次・二次ともに得点がこれを下回ると不合格になります。

一次試験の RT 専門で問われる範囲は、放射線の物理から像の評価までにわたります。

  • 放射線の発生と性質
  • 物質を透過するときの減衰
  • フィルムやイメージングプレートの特性
  • 露出条件の考え方
  • 像の濃度とコントラスト
  • 幾何学的な不鮮鋭度
  • 透過度計の使い方
  • 写りやすいきずと写りにくいきずの違い

計算を含む問題もあり、公式を暗記するだけでなく、条件を変えたときに像がどう変わるかを説明できる理解が求められます。

二次試験は実技で、レベル1では指示書に従って試験を行い、結果を記録する力が見られます。レベル2では、それに加えて、GA1 に示されているとおり自分で検査指示書を作成し、透過写真の像を規格に照らして評価する力が問われます。RT の実技は「像を見てきずの種類と位置を読み取り、合否を判断する」場面が中心になるため、筆記の知識を像の読み取りに結び付けられるかどうかで差がつきます。

申込の流れと確認先

受験の申請先は JSNDI で、流れは「訓練を修了する」「受験を申請する」「一次試験を受ける」「二次試験を受ける」「経験月数を満たして認証を受ける」の順に進むのが基本です。申請の際には訓練の記録など要件を満たしていることの証明が求められるため、訓練を受けた時点で記録を手元にそろえておくと手続きが滞りません。試験の実施時期や受験料、申請の締め切りは回ごとに案内されるので、JSNDI の資格・認証のページに掲載される試験案内で確かめておくと安心です。

レベルごとの合格率や、方法による合格率の違いは 非破壊検査の合格率の解説にまとめています。受験計画を立てる際の目安として使えます。

RTの合格に向けた勉強法は筆記と透過写真で分ける

観察器の光で溶接部の透過写真を照らし、きずの像と透過度計の線像を読み取る場面

RT の勉強は、一次試験の筆記と、二次試験の透過写真の読み取りで、やり方を分けて考えると進めやすくなります。筆記は知識の積み上げ、実技は目と判断の訓練で、伸ばし方が違うからです。

一次試験は「条件を変えると像がどう変わるか」で理解する

筆記対策の土台は、JSNDI が発行している RT の教本と問題集です。訓練で使う教材がそのまま出題範囲の基礎になっているので、訓練の段階からノートをつくり、章ごとに「何を変えると何が変わるか」の形で整理しておくと復習が楽になります。たとえば、管電圧を上げるとコントラストはどうなるか、線源とフィルムの距離を変えると不鮮鋭度はどう変わるか、といった因果の形で覚えると、初めて見る設問にも対応しやすくなります。

計算問題は、露出量や距離の関係など、使う式の種類はそれほど多くありません。式を覚えたら、数値を変えた問題を自分で何問か解き、単位の取り違えがないかを確かめる練習をしておくと、本番での失点を減らせます。一般試験の範囲は他の方法の基礎も含むため、RT 以外の方法の原理も一通り目を通しておくと安心です。

二次試験は透過写真を見る量で差がつく

実技で問われるのは、透過写真に写った像から、きずの種類・位置・大きさを読み取り、規格の基準に照らして合否を判断する力です。これは本を読むだけでは身に付きにくく、実際の透過写真をどれだけ見てきたかで差が出ます。現場で働いている方は、上司やレベル2・レベル3の先輩に頼んで、過去の透過写真を一緒に見ながら「なぜこれをブローホールと判断したのか」「なぜこの像は合格なのか」を説明してもらうのが一番の近道です。

像の読み取りに慣れてきたら、透過度計で像質が要件を満たしているかを確かめる手順、濃度の測り方、きずの寸法の測り方を、自分の手で順番どおりに繰り返します。レベル2を受ける方は、検査指示書を自分で書く練習も欠かせません。撮影する対象、使う線源と条件、透過度計の種類と置き方、判定の基準を、誰が読んでも同じ撮影ができる書き方でまとめる練習を、何本か繰り返しておくと本番で慌てません。

勉強時間は訓練の後半から逆算する

訓練時間を満たした直後に受験するのが一般的なので、勉強は訓練と並行して始め、訓練の後半からは過去の出題傾向に沿った問題演習と透過写真の読み取りに時間を寄せるのが効率的です。働きながら勉強時間をどう確保するかは 非破壊検査の勉強時間の目安で、資格別に整理しています。

RTの現場ではほかにどんな放射線の資格が必要か

RT の資格を取っても、それだけで放射線を使う作業のすべてを任されるわけではありません。RT は放射線を扱うため、JIS Z 2305 の資格とは別に、労働安全衛生関係の法令による管理がかかります。労働安全衛生法の第14条は、政令で定める危険・有害な作業について、事業者に作業主任者の選任を求めています。

この作業主任者の具体的な内容は 電離放射線障害防止規則に定められています。JIS Z 2305 の RT の資格と、同規則による2つの作業主任者は、根拠と担う役割がそれぞれ違います。どちらの作業主任者も、免許を受けた人が就く国家資格です。

資格

根拠

対象となる作業

担う役割

RT の資格(レベル1〜3)

JIS Z 2305(JSNDI が認証)

放射線透過試験

検査の技量

エックス線作業主任者

電離放射線障害防止規則 第46条

エックス線装置を使う作業

放射線作業の安全管理

ガンマ線透過写真撮影作業主任者

電離放射線障害防止規則 第52条の2

ガンマ線照射装置を使う透過写真の撮影

放射線作業の安全管理

同じ電離放射線障害防止規則の第4条は、放射線業務従事者の被ばく線量の限度を5年間で100ミリシーベルト、かつ1年間で50ミリシーベルトと定めています。求人で RT レベル2とエックス線作業主任者が並んで書かれていることがあるのは、検査の技量と安全管理の両方を担える人が現場で重宝されるためです。RT の資格と作業主任者の免許を順に取っていくと、現場で任される範囲が撮影と判定から、作業全体の段取りまで広がります。

取得後の有効期間・更新・再認証はどう考えるか

RT資格の取得後の流れ。認証の有効期間は5年で、5年ごとに更新、10年ごとに再認証で改めて試験を受ける

RT の資格は一度取れば終わりではありません。GA1 では、認証の有効期間を 5 年とし、5 年ごとに更新、10 年ごとに再認証を受ける仕組みを定めています。更新では、その間も RT の業務を継続していたことなどの条件が確認され、再認証では改めて試験を受けることになります。

この仕組みは、資格を取った後も RT の業務を続けることを前提にしています。部署の異動や転職で RT の業務から長く離れると、更新の条件を満たせなくなるおそれがあります。転職を考えるときは、次の職場で RT の業務を続けられるかどうかも、資格を生かすうえでの確認事項になります。

まとめ:自分の経験月数からRT資格の取り方を決める

RT の資格は、訓練・試験・実務経験の3つの要件がそろって認証されます。レベル2なら訓練 80 時間と実務経験 9 か月、直接受験なら訓練 120 時間と実務経験 12 か月が基準です。筆記は「条件を変えると像がどう変わるか」で理解し、実技は透過写真を見る量と検査指示書を書く練習で差がつきます。現場では、エックス線作業主任者などの放射線の資格と組み合わせて役割が広がっていきます。

いまの職場で RT の経験を積めるか、レベル2の判定業務まで任せてもらえるかは、会社によって大きく違います。資格をどう生かすかを考えるときに、今の経験で選べる職場や仕事の範囲を一度並べてみると、次に取るべき資格や時期が見えやすくなります。転職するかどうかは、相談の後で決めてかまいません。無料キャリア相談では、いまの経験と資格の状況をもとに、選べる職場と次に取る資格を一緒に整理できます。

関連記事