UT レベル1試験の内容と合格率|筆記120分・実技3体100分の対策

溶接した鋼板の試験体に斜角探触子を当て、デジタル探傷器でエコー波形を確かめる様子
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UT レベル1の試験で問われるのは原理の理解と、時間内に調整・探傷・記録する実技力

会社から「まずは UT のレベル1を取っておいて」と言われた、あるいは非破壊検査の仕事に就いたばかりで最初の資格として超音波探傷試験(UT、Ultrasonic Testing)を考えている。その場合にまず知っておきたいのは、筆記と実技のどちらにも関門があることです。

UT レベル1は筆記の一次試験(四者択一・120分)と実技の二次試験(試験体3体・100分)の2段階で、2025年秋期の合格率は一次が46.0%、二次が68.7%でした。受験の前には過去5年以内に40時間の訓練と、近方視力・色覚の証明が要ります。合格したあとは、実務経験3か月を満たして認証を申請すると資格証明書が出ます。数値は、試験を実施している日本非破壊検査協会(JSNDI)が公開している認証制度の文書と試験結果から引いています。

UT レベル1の技術者は現場で何を任されるのか

UT は、人の耳に聞こえない高い周波数の音波を材料に送り込み、内部のきずで反射して戻ってくるエコーを探傷器の画面で読み取る方法です。UT の資格は、JSNDI が日本産業規格 JIS Z 2305 に基づいて認証しています。レベルは1〜3の3段階で、レベル1は「指示書に従い、レベル2またはレベル3の技術者の監督のもとで検査を実施する力量がある」と認められた段階です(JSNDI 認証制度文書 GA1 §5.1)。

GA1 では、レベル1の技術者に任せてよい作業として次の4つを挙げています。

  • 装置を調整する
  • 検査を実施する
  • 決められた基準に沿って結果を記録し、分類する
  • 結果を報告する

一方で、どの方法・どの技法で検査するかを選ぶことと、検査結果を解釈することについては、レベル1の技術者は責任を負わないと定められています。

UT に置き換えると、探傷器と探触子を準備して感度などを調整し、指示書のとおりに走査して、画面に出たエコーを決められた様式で記録する。ここまでがレベル1の仕事で、そのエコーが合格か不合格かを判定するのはレベル2以上の役割です。試験もこの役割分担に沿って作られていて、レベル1の実技では判定や指示書の作成は求められず、「調整・探傷・記録」を正確にこなせるかが見られます。

UT レベル1を受けるには何が必要か:訓練40時間と視力の証明

レベル1の訓練時間を方法別に比べた棒グラフ。UT・RT・ETは40時間で、MT・PTの16時間より長い

UT レベル1を新規に受験するときの条件は、訓練時間と視力の2つです。GA1 では、受験しようとする人は過去5年間に方法・レベルごとに決められた最小限の訓練時間を満たす必要があるとしていて、UT レベル1の訓練時間は40時間です(GA1 表9.1.1-1)。訓練は方法ごとに訓練実施記録を作って、受験申請のときに提出します。

同じレベル1でも方法によって訓練時間は違い、UT は RT・ET と同じ40時間で、MT・PT の16時間より長く設定されています。

視力については、雇用主が証明する書類が必要です。近方視力は過去1年以内の証明で、30cm 以上離れて決められた大きさの文字が読めることが条件になっていて、眼鏡やコンタクトレンズによる矯正も認められています。色覚は、申請する方法で使う色やグレーの濃淡を見分けられ、業務上支障がないことを雇用主が証明します(GA1 §9.1.2)。

見落としやすいのが実務経験の扱いです。GA1 では、受験申請の時点では経験期間を問わないとしています。経験の証明が必要になるのは、試験に合格したあとの新規認証登録の手続きで、UT レベル1に必要な工業に関わる経験は3か月です(GA1 §9.1.3・表10.3-1)。訓練の時間は経験には含まれないので、40時間の講習を受けたことで3か月の一部が埋まるわけではありません。

受験の流れや申込みの時期、手数料などの最新情報は、JSNDI の資格試験のページで確認できます。

一次試験と二次試験はそれぞれ何をする試験か

新規試験は一次試験(筆記)と二次試験(実技)に分かれていて、二次試験を受けられるのは一次試験の合格者だけです(GA1 §6.1)。試験の中身は、JSNDI の「資格試験のレベルと試験内容」(GA2、Rev.20210101)に方法ごとに定められています。

区分

形式

出題・試験体

合格の基準

一次試験 一般試験

四者択一

40問以上

70%以上

一次試験 専門試験

四者択一

30問以上

70%以上

二次試験 実技試験

探傷と記録

試験体3体

各試験体で70%以上

表の問題数と試験体の数は GA2 の UT レベル1の欄、合格の基準は GA1 §7.1.1 によるものです(JSNDI GA2 資格試験のレベルと試験内容)。

一次試験(筆記)

一次試験は四者択一の多項選択式で、試験時間は120分です。一般試験では UT の原理や装置に関する問題が最小限40問、専門試験では鋳造品・鍛造品・圧延製品・管・溶接工程と、それぞれに関連するきずを含む工業製品の試験についての問題が最小限30問出ます。

注意したいのは合格の基準で、一般試験と専門試験の両方でそれぞれ70%以上を取らなければ合格になりません。合計点で70%を超えていても、どちらかが70%を下回れば不合格です。原理には自信があっても製品ごとのきずの知識が薄い、またはその逆という人は、ここで止まります。

二次試験(実技)

二次試験は、次の3つの作業を通して行います。

  1. 使用する UT の機器材システム(探傷器や探触子など、試験に使う機器一式。調整・管理を含む)を確認し、準備する
  2. 指示された3体の試験体を探傷する
  3. 指示書に基づいて試験結果を記録し、報告する

試験時間は100分で、合格には試験体ごとにそれぞれ70%以上の点数が必要です。3体のうち2体がよくできていても、1体で崩れれば不合格になります。機器の調整から記録までを1体あたり30分あまりで回す計算になるので、知っているかどうかより、手順が体に入っているかどうかが結果を分けます。

不合格になったときの再試験

一次試験か二次試験で不合格になった人は、次回と次々回の試験に限り新規再試験として受験できます。二次試験で不合格になった場合は一次試験が免除され、二次試験から受け直せます。一次試験には一般・専門のパート別の再試験はなく、再試験でも両方を同じ回で70%以上にする必要があります(GA1 §6.2・§8.2)。

UT レベル1の合格率はどのくらいか:一次5割前後・二次5割台後半〜7割弱

JSNDI は試験の結果を会報の NDT フラッシュで公表しています。直近2回の、UT レベル1とレベル1全体(全方法の合計)の合格率を表にしました。2025年春期は2025年9月8日に訂正版が出ているので、訂正後の値を使っています(NDT フラッシュ Vol.74 No.9 訂正版、同 Vol.75 No.3)。

区分

2025年春期

2025年秋期

UT レベル1 一次試験

49.1%

46.0%

UT レベル1 二次試験

56.4%

68.7%

レベル1全体 一次試験

53.3%

47.9%

レベル1全体 二次試験

69.2%

76.0%

公表の合格率は、欠席者を除いた受験者のうち基準を満たした人の割合です。UT レベル1の一次試験の申請者は春期が510人、秋期が564人で、レベル1の中では受験者がもっとも多い区分です。

一次試験では、受験者のおよそ半分が落ちています。二次試験の合格率はレベル1全体より低く、2025年春期は56.4%と、二次の受験者のうち4割強が実技で止まりました。UT レベル1の関門は筆記と実技の両方にあると考えて準備したほうが安全です。方法別・レベル別の合格率の比較は非破壊検査の合格率の記事にまとめています。

UT の試験が手ごわいと言われるのはなぜか

斜角探触子から出た超音波が溶接内部のきずと余盛りの両方で反射し、二つのエコーが返る断面図

UT が手ごわいと言われるのは、きずを直接見るのではなく、探傷器の画面に出たエコーから読み取る方法だからです。浸透探傷試験(PT)や磁粉探傷試験(MT)のように、きずの模様が表面に直接見えるわけではありません。探触子の当て方や角度、接触媒質のなじみ方、感度の設定によって同じきずでもエコーの出方が変わり、試験体の形状や溶接の余盛りから返ってくるエコーと、きずのエコーを見分ける必要があります。

試験の面でも、この性格がそのまま出ます。筆記では音波の伝わり方や反射・屈折、減衰、探触子の種類といった物理の理解が問われ、用語を暗記するだけでは選択肢を絞り切れない問題が混ざります。実技では、探傷を始める前の機器の確認と調整も採点の対象で、ここでつまずくと残りの時間が足りなくなります。2025年春期の合格率で見ても、PT レベル1の一次試験が63.0%だったのに対し、UT レベル1は49.1%でした(NDT フラッシュ Vol.74 No.9 訂正版)。

UT は表面から見えない内部のきずを片側の面からでも探せる方法で、溶接部や鋼材、鍛造品などの検査で広く使われています。原理と手順を一度体系的に押さえてしまえば、レベル2・レベル3まで同じ土台の上で積み上げていける方法です。UT の仕事内容や使われる業界は、UT 資格の取り方の記事で広く扱っています。

UT レベル1はどう勉強すればいいか:筆記と実技を分けて準備する

一次と二次は性質の違う試験なので、同じやり方でまとめて対策するより、準備を分けて考えたほうが効率が上がります。

一次試験は「一般」と「専門」を別々に70%へ

一次試験は合計点では判定されないので、問題集の正答率は一般試験と専門試験に分けて記録します。

一般試験の範囲は UT の原理と装置です。音速と波長、縦波と横波、反射と屈折、減衰、垂直探触子と斜角探触子の違いといった項目を、式や図と結びつけて理解しておくと、数字の入った問題にも対応できます。専門試験の範囲は鋳造品・鍛造品・圧延製品・管・溶接部の試験で、製品ごとに「どこに、どんなきずが、なぜ出やすいか」と、それをどの探傷方法で見つけるかをセットで覚えると、応用問題で迷いにくくなります。

参考書と規格は GA2 のリストから選ぶ

何で勉強するかに迷ったら、JSNDI が GA2 に載せている参考書籍の一覧から選ぶのが確実です。2020年12月現在のリストでは、UT レベル1の参考書籍として次の4点に印が付いています(GA2 参考文献(UT))。

  • 超音波探傷試験Ⅰ(2017年版)
  • 超音波探傷試験Ⅰ問題集(2017年版)
  • 超音波探傷試験実技参考書「デジタル超音波探傷器」編(2009年版)
  • 超音波探傷入門(パソコンによる実技演習)DL 版「デジタル超音波探傷器」編(2013年版)

あわせて、関連する規格として JIS Z 3060(鋼溶接部の超音波探傷試験方法)や、標準試験片を定めた JIS Z 2345 のシリーズなどが挙がっています。リストは2020年12月時点のものなので、購入の前に版が新しくなっていないかを JSNDI のサイトで確かめておくと安心です。

二次試験は「調整から記録まで」を通しで練習する

実技の練習は、探傷の部分だけを切り出すのではなく、機器の確認・調整から記録の記入までを1体分の流れとして、時間を計って、1体30分あまりのペースで回せるかを確かめながら繰り返すのが効果的です。

時間を失いやすいのは、まず調整の段階です。感度などの調整に手間取ると、その分だけ探傷の時間が削られます。探触子の当て方や接触媒質のなじませ方が安定しないとエコーの高さがぶれて、同じ位置を何度も走査し直すことになります。形状や余盛りから返るエコーときずのエコーを見分けるのに迷う時間も積み重なり、最後に記録様式の記入が駆け足になって記載漏れが出る、という流れになりがちです。どの工程で時間が延びたかを毎回メモしておくと、次の練習で重点を置く場所を決められます。

普段の業務で UT を使っている人も、職場の装置や記録様式と試験で求められるものが同じとは限りません。訓練の講習で使う装置と様式に慣れておき、日常業務で省略しているチェックがないかを見直しておくと、実技での失点を減らせます。まだ現場で UT に触れる機会が少ない人は、講習のあとに装置に触れる時間をどれだけ取れるかが、二次試験の結果に直結します。

受ける回から逆算して計画を立てる

新規試験の受験申請の受付は、筆記試験の約2か月前の予定と案内されています(GA2)。訓練40時間の受講と訓練実施記録の準備、視力証明の取得を申請までに終わらせる必要があるので、受ける回を決めたら、そこから逆算して講習の日程と勉強の時間を割り振ります。必要な勉強時間の目安は非破壊検査の勉強時間の記事も参考になります。

合格したあとの手続きとレベル2への進み方

合格後2年以内に経験3か月を証明して認証申請し、有効期間5年の証明書を得て、発効から5年目に更新・10年目に再認証する流れ

合格から資格証明書の発行、その後の更新までの手続きは GA1 §10 に定められています。

  1. 合格と同時に「新規認証申請書」が送られてくる(申請できるのは合格から2年以内)
  2. UT の実務経験3か月の証明を付けて申請する
  3. 書類審査に通ると資格証明書が発行される(有効期間は5年)
  4. 5年目に更新の手続きをする
  5. 資格発効から10年目に再認証を受ける(レベル1は実技の再認証試験)

レベル1の次に目指すのは多くの場合レベル2です。レベル2の実技では、試験体の探傷と記録に加えて、合否の判定と、レベル1技術者に向けた検査指示書の作成も求められます(GA2)。訓練時間・認証に必要な経験・実技の試験時間も、レベル2では長くなります(GA1 表9.1.1-1・表10.3-1、GA2)。表のレベル2の値は、先にレベル1を取得している場合のものです。

方法とレベル

訓練時間

認証に必要な経験

実技の試験時間

UT レベル1

40時間

3か月

100分

UT レベル2

80時間

9か月

160分

一次試験の合格率も、UT レベル2は2025年春期が33.9%、秋期が30.7%で、レベル1より一段低くなります(NDT フラッシュ Vol.74 No.9 訂正版、同 Vol.75 No.3)。レベル1を取ってから現場で探傷と記録の経験を積み、そのうえでレベル2の準備に入るのが、原理と手順の両方を無理なく積み上げられる順序です。資格体系の全体像は非破壊検査の資格一覧と難易度で確認できます。

UT レベル1はキャリアのどこに効くか

UT レベル1を持っていると、UT の探傷と記録を任せられる技術者であることを資格証明書で示せます。判定まで任されるレベル2へ進むための経験を積む土台にもなります。

UT が使われるのは、溶接部や厚みのある鋼材の内部を調べる現場です。たとえば労働安全衛生法は、ボイラーや第一種圧力容器などを「特定機械等」と定め、製造に都道府県労働局長の許可を求めています(労働安全衛生法 第37条・別表第一)。この条文が UT を名指ししているわけではありませんが、こうした圧力設備や、橋梁・プラント・造船などの溶接構造物の品質を確かめる場面で、非破壊検査が使われています。

「UT Level2 以上」を条件にする求人も見られるので、レベル1は到達点というより、判定まで任されるレベル2へ向かう通過点と考えておくと、資格の取り方の優先順位をつけやすくなります。UT 技術者の年収の実態と上げ方はUT 技術者の年収の記事で詳しく扱っています。

受ける回を決めて、次の一手を整理する

準備の重点は人によって違います。問題集で一般試験と専門試験のどちらが70%に届いていないか、講習のあとに装置に触れる時間をどれだけ取れるか、受けたい回の申請までに訓練40時間と視力証明が間に合うか。この3つを確かめると、自分がどこに時間を割くべきかが決まります。

資格を取ったあとにどの業界・どの働き方につながるかは、今の経験や地域によって変わります。転職するかどうかは、話してから決めれば大丈夫です。認証に必要な UT の実務経験を今の職場で積めるか、レベル2まで経験を重ねられる現場かどうかを並べ直すだけでも、次に取るべき資格や経験の積み方が見えやすくなります。無料キャリア相談では、今の経験から狙えるルートを一緒に整理できます。

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