UT レベル2試験はどんな試験か
UT レベル1を取って次の一歩を考えている人や、超音波探傷試験(UT)のレベル2の受験を控えた現場の技術者がまず知りたいのは、試験の中身と、どこが関門になるかでしょう。UT レベル2の試験は「筆記の一次試験」と「実技の二次試験」の二段構えで、一次は一般試験と専門試験、二次は試験体の探傷と検査指示書の作成から成ります。一次は120分、二次は試験体3体を正味160分で扱い、どちらも70%以上の得点が合格基準です。2025年春期の合格率は一次33.9%・二次58.3%で、先に筆記が関門になっています(試験の構成と時間はJSNDI GA2、合格基準はGA1、合格率はJSNDI の新規資格試験結果)。
UT レベル2は、日本非破壊検査協会(JSNDI)が JIS Z 2305 に基づいて認証する資格の一つです。JSNDI は、非破壊検査の結果の精度は技術者の技量に大きく左右されるため技術レベルを一定に保つ必要があるとして、2003年度から JIS Z 2305 に基づく認証制度を運用しています(JSNDI 資格試験)。資格は「試験方法×レベル」の組み合わせで取るので、同じレベル2でも UT と MT では受験の条件も試験の中身も違います。
レベル2は、雇用主の許可のもとで技法の選択や結果の解釈・評価、レベル1への指示書の作成まで任せられる段階です。現場で「探傷する人」から「判断して指示を出す人」に役割が変わる節目なので、試験もその役割に合わせて、探傷の腕だけでなく判定と指示書の作成までを見る構成になっています(レベル2の役割はGA1の資格レベルの説明による)。
受験に必要な訓練80時間と、認証に必要な実務経験9か月
JIS Z 2305 の資格を取るには、視力、訓練、試験の合格、経験の4つの条件を満たす必要があります。条件ごとに、求められる段階が違います(JSNDI 新規に受験するには)。
- 受験申請の時点で証明が要るもの:視力(近方視力と色覚)、訓練の修了
- 試験で満たすもの:一次試験と二次試験の合格
- 合格後の認証の段階で求められるもの:実務経験
経験を認証の段階で満たせばよいことは、GA1の新規認証の要件にも示されています。
「実務経験が足りないから受験できない」と考えて先送りしている人は、この順番を一度確認しておくと計画が立てやすくなります。
訓練時間と実務経験の月数は、JSNDI の認証制度の案内(GA1、2026年7月1日版)に試験方法ごとに定められており、UT のレベル2は UT レベル1を持っているかどうかで条件が分かれます(JSNDI JIS Z 2305:2013 認証制度のご案内(GA1))。下の表の「下位資格あり」は UT レベル1保持者、「直接受験」はレベル1を持たずにレベル2を受ける人です。
受験ルート | レベル2の訓練時間 | レベル2の実務経験 |
|---|---|---|
UT(下位資格あり) | 80時間 | 9か月 |
UT(直接受験) | 120時間 | 12か月 |
UT(厚さ測定の資格のみ保持) | 120時間 | 12か月 |
直接受験は近道に見えますが、訓練も経験もレベル1経由より長く設定されています。
ひとつ注意したいのは、超音波厚さ測定(UM)のレベル1はここでいう「レベル1」に数えられない点です。GA1 は限定区分の資格をレベル1保持者に含めないとしているため、UM レベル1を持っていても、UT レベル2はレベル1を持たない人と同じ条件で受けることになります。表の3行目がこれにあたります。厚さ測定の業務から探傷に広げたい人は、先に UT レベル1を取るか、直接レベル2を狙うかを、訓練の受け方と一緒に比べておくと迷いが減ります。
試験は年に2回、春期と秋期に行われ、期ごとに申請書類の提出時期が決まっています。視力と訓練の証明がそろったら受験申請書を作って提出し、受験資格の審査を通ると試験を受けられます(JSNDI 新規に受験するには)。日程や申請書類は期ごとに更新されるので、受ける期の案内で確認するのが確実です。
2026年秋期の新規試験実施案内によると、受験料は1申請(1つの NDT 方法)あたり20,900円(税込)で、再試験も申請ごとに受験料がかかります。一次試験は札幌から長崎までの各地区で行われ(春期と秋期で一部の地区が異なります)、UT レベル2の二次試験は東京・大阪・福岡・千歳・名古屋・広島で実施されます(JSNDI 新規試験実施案内(EA2))。講習会など訓練にかかる費用は、これとは別に必要です。
UT の資格全体の取り方(レベル1からの進め方や講習の探し方)は、超音波探傷試験(UT)資格の取り方で整理しています。
一次試験(筆記)では何を問われるのか

一次試験は四者択一のマークシート方式の筆記試験で、試験時間は120分です。JSNDI の「資格試験のレベル別概要(GA2、2026年7月1日版)」によると、UT レベル2の一次試験は一般試験が最小40問、専門試験が最小30問で構成されています(JSNDI 資格試験のレベル別概要(内容と時間)と参考文献(GA2))。合格するには一般試験と専門試験の両方で70%以上が必要で、片方だけ高得点でも合格にはなりません(合格基準はGA1)。
一般試験:原理と装置の理解
一般試験は、各試験方法の原理や探傷の技法、装置などに関する問題です。UT であれば、超音波の伝わり方、反射と屈折、探触子の特性、垂直探傷と斜角探傷の考え方、感度の調整といった、探傷の土台になる理屈がこの範囲にあたります。日常業務で装置を扱っていても、「なぜその設定にするのか」を言葉で説明できない部分は失点しやすいところです。
専門試験:対象物と規格の知識
専門試験は、供用前・供用中の試験(製造段階を含む)での分野専門理論の適用と、規格・仕様書・手順書・判定基準に関する問題です。GA2 は UT レベル2の専門試験の範囲を「鋳造品、鍛造品、圧延製品、管、溶接工程及び関連きずを含む工業製品の試験」としています。RT や MT のレベル2の専門試験が鋳造品・鍛造品・溶接工程を対象にしているのに対し、UT は圧延製品と管まで範囲に入っているのが特徴です。自分が普段扱っていない製品分野の問題が出ると考えて準備しておく必要があります(GA2)。
二次試験(実技)では何をするのか
一次試験に合格すると、二次試験(実技試験)に進めます。GA2 によると、UT レベル2の実技試験は試験体3体を対象に、正味160分で行われます(GA2)。試験会場では説明の時間などが加わるため、拘束時間はこれより長くなります。
試験では、準備から指示書の作成まで4つの作業を行います。
- 使用する UT 機器材システムの確認と準備(試験機器の調整・管理を含む)
- 指示された3体の試験体の探傷
- 手順書または指示書に基づく試験結果の記録、合否判定、報告
- レベル1技術者への検査指示書の作成
レベル1の実技と比べて大きく違うのは、合否判定とレベル1技術者への検査指示書の作成が入っている点です。GA1 も、レベル2の二次試験には検査指示書の作成が含まれ、これも70%以上が合格基準になると定めています(GA1)。探傷がうまくできても、結果を規格に照らして判定し、他人が同じ作業を再現できる指示書に落とし込めなければ点になりません。
実技で使う超音波探傷器については、JSNDI が試験期ごとに案内を出しており、2025年から2026年にかけても探傷器に関する変更のお知らせが資格試験のページに掲載されています(JSNDI 資格試験)。普段の職場で使っている機種と操作が異なる場合もあるので、受験する期の案内と操作マニュアルには早めに目を通しておくと当日あわてずに済みます。
UT レベル2は他の試験方法より準備の負担が大きいのか

UT は RT と並んで、主な5つの方法の中で訓練と実務経験の要件が最も重い方法です。訓練時間と実務経験はレベル1保持者の場合、実技試験の時間は GA2 の正味時間です(GA1・GA2)。
方法 | レベル2の訓練時間 | レベル2の実務経験 | レベル2の実技試験時間 |
|---|---|---|---|
UT | 80時間 | 9か月 | 160分 |
RT | 80時間 | 9か月 | 165分 |
ET | 48時間 | 9か月 | 120分 |
MT | 24時間 | 3か月 | 110分 |
PT | 24時間 | 3か月 | 120分 |
UT は、探触子を動かしながら画面のエコーを読み、その場できずの位置や大きさを判断する方法です。探触子の当て方や走査の仕方で得られるエコーが変わるため、知識だけでなく手の感覚と判断を合わせて身につける必要があり、そのための時間が訓練と経験に織り込まれていると考えると納得しやすいでしょう。
取得までの負担が大きい分、溶接部や圧延材、管の内部を見られる技術者として評価される場面は多い一方、実際に求められるかは勤め先や発注者の仕様しだいです。UT 技術者の年収の考え方はUT 技術者の年収実態で詳しく扱っています。
UT レベル2の合格率はどのくらいで、どこでつまずくのか
JSNDI は新規資格試験の結果を、春期・秋期ごとに協会の会報で公表しています。2025年春期の結果では、UT レベル2の一次試験は申請1,271人に対して合格405人で合格率33.9%、二次試験は申請670人に対して合格383人で合格率58.3%でした(JSNDI JIS Z 2305 2025年春期 新規資格試験結果)。合格率は欠席者を除いた受験者に対する割合で、試験期ごとに変わるので、あくまで2025年春期時点の目安として見てください。
方法 | レベル2の一次合格率 | レベル2の二次合格率 |
|---|---|---|
UT | 33.9% | 58.3% |
RT | 45.4% | 44.5% |
ET | 50.5% | 70.8% |
MT | 31.5% | 62.7% |
PT | 43.5% | 61.8% |
UT レベル2で目立つのは、一次試験の合格率が二次より低いことです。実技より先に、筆記で3人に2人が足止めされている計算になります。背景は推測になりますが、現場経験のある受験者ほど「手は動くが、理屈と規格の細部を問われると落とす」形になりやすいと考えられます。一般試験と専門試験の両方で基準を超える必要がある仕組みも、この傾向を強めている可能性があります。
二次試験の合格率は一次より高いものの、4割強は不合格になっています。不合格になった試験は、次回と次々回の2回まで再試験を受けられます(JSNDI 新規に受験するには)。ほかの方法やレベルの合格率の読み方は、非破壊検査の合格率でまとめています。
UT レベル2はどう勉強すればよいか
一次の合格率が二次より低いことから、時間をかける先は「一次試験の筆記を越えること」と「実技で判定と指示書まで時間内に仕上げること」の2点に置くのが合理的です。JSNDI は GA2 で、試験方法・レベルごとに参考書籍と関連規格を示しています(GA2)。まずはこの一覧を手元に置き、出題の土台がどこにあるのかを把握するところから始めると遠回りしません。
一次試験対策:参考書と問題集を往復する
GA2 が UT レベル2の参考書籍に挙げている主なものは、原理の基本書、問題集、実技の参考書、材料の知識の4種類です。
- 『超音波探傷試験Ⅰ』『超音波探傷試験Ⅱ』:原理から探傷技法までの基本書
- 『超音波探傷試験Ⅰ問題集』『超音波探傷試験Ⅱ問題集』:一次試験の出題形式に慣れるための問題集
- 『超音波探傷試験実技参考書』:実技の手順の確認
- 『非破壊試験技術者のための金属材料概論』:材料と製造工程の知識
進め方としては、問題集を先に一通り解いて自分の弱い分野を把握し、間違えた問題の根拠を参考書で確認する往復が効率的です。参考書を頭から読み通すより、何が問われるかを先に知っておく方が、限られた時間を弱点に振り向けられます。
専門試験では、規格の知識も問われます。GA2 が UT の関連規格として挙げているもののうち、主なものは溶接部の探傷方法、探傷方法の通則、標準試験片の規格です。
- JIS Z 3060:鋼溶接部の超音波探傷試験方法
- JIS Z 2344:金属材料のパルス反射法による超音波探傷試験方法通則
- JIS Z 2345 シリーズ:超音波探傷試験用の標準試験片
全文を暗記する必要はありませんが、エコー高さの領域区分やきずの分類、標準試験片の使い分けといった「判定に直結する部分」は、表や図と一緒に覚えておくと実技にもそのまま生きます。
二次試験対策:判定と指示書まで通して練習する
実技では、二次試験の4つの作業を160分に収める必要があります。普段の業務では探傷と記録で手が止まり、判定や指示書は上長が担当しているという人も多いはずです。訓練や練習の段階から、探傷だけで終わらせず、判定と指示書の作成までを本番と同じ順番で通して行い、どこで時間を使っているかを計っておくと、当日の時間配分が見えてきます。
指示書の作成は、レベル1の技術者がその指示書だけを見て同じ探傷を再現できるかどうかが基準になると考えると書きやすくなります。使用する探触子と周波数、感度の調整方法、走査の範囲、記録の条件など、現場で自分が無意識に決めている項目を言葉に起こす練習をしておくと、試験だけでなく合格後の仕事でもそのまま役立ちます。
職場の環境を使う
UT の訓練時間80時間は、講習会だけでなく、所属する会社の教育で満たす場合もあります。社内にレベル2やレベル3の先輩がいるなら、実技の指示書を見てもらったり、判定の根拠を説明してもらったりするのが一番の近道です。勉強時間の目安やほかの方法との比較は、非破壊検査の資格一覧と難易度も参考になります。
合格した後に必要な認証と更新は

試験に合格したら、実務経験の要件(レベル1保持者なら9か月)を満たしたうえで認証の申請を行い、資格証明書が発行されます。GA1 によると、資格の有効期間は5年で、5年目に更新、10年目に再認証を受ける仕組みです。レベル2の再認証試験は実技試験で行われるため、合格したあとも現場で UT を使い続けていることが資格を保つ前提になります(GA1)。
GA1 は JIS Z 2305 の資格証明書を、官公庁が発行する免許証ではなく適格性を証明するものと位置づけ、業務に資格証明書が必要かどうかは顧客との契約や条例などの規則に従うとしています。労働安全衛生法が免許や技能講習の修了を求める就業制限とは別の枠組みです(労働安全衛生法)。UT レベル2が評価されるかどうかは、勤め先や発注者の仕様がこの資格を求めているかに左右されるため、どの業界・どの会社で求められているかは受験前から意識しておく価値があります。
まとめ:UT レベル2をキャリアのどこに置くか
UT レベル2は、筆記の一次が最初の関門で、実技では探傷に加えて判定と指示書の作成まで問われる試験です。受験に要るのは視力と訓練の証明で、実務経験は認証の段階で求められます(GA1)。
勉強は、問題集と参考書を往復して一次の筆記を固め、実技は判定と指示書の作成まで通して練習するのが基本です。そのうえで、今の職場や志望先で UT レベル2が求められているかを受験前に確かめておくと、取る時期と勉強の優先順位を決めやすくなります。
UT レベル2を取ったあとにどんな職場で評価されるのか、今の経験でどの業界に進めるのかを整理したいときは、テンキャリの無料キャリア相談で一緒に整理することもできます。転職するかどうかは、話してから決めれば大丈夫です。資格を取る時期と今の経験を並べ直すだけでも、勉強の優先順位をつけやすくなります。
