UT レベル3の試験はどんな内容か
超音波探傷試験(UT)のレベル2で現場を回してきた人がレベル3を考えたとき、最初に戸惑うのは、実技が無くなって何を準備すればよいのかが見えにくいことです。UT レベル3の試験は、レベル1・2の「筆記+実技」とは組み立てがまったく違います。試験で何が問われ、受けるために何が要り、どのくらいの人が受かっていて、どこから準備すればよいのか。
UT レベル3は一次試験・二次試験ともに筆記です。一次は全方法に共通の基礎試験(パートA〜C)、二次は UT に絞った主要方法試験(パートD〜F)で、どのパートも 70%以上の得点で合格となります(日本非破壊検査協会 JIS Z 2305 認証制度の案内(GA1)。2026年7月1日現在の版)。
試験 | パート | 問われる内容 |
|---|---|---|
一次(基礎試験) | パートA | 材料科学・製造技術の知識 |
一次(基礎試験) | パートB | JIS Z 2305 の資格・認証の知識 |
一次(基礎試験) | パートC | RT または UT を含む四つの方法のレベル2の知識 |
二次(主要方法試験) | パートD | UT のレベル3の知識 |
二次(主要方法試験) | パートE | 関連分野での UT の適用 |
二次(主要方法試験) | パートF | 関連分野での手順書作成 |
レベル2までのように探触子を当ててエコーを読む実技は、レベル3の新規試験にはありません。その代わりに、材料・製造の知識、制度の知識、ほかの方法の知識、そして UT の手順書を自分で書く力が問われます。
レベル2との違いは「手順書を作る側」に回ること
GA1 が示すレベル別の役割では、レベル2は規格・仕様書・手順書を実際の作業条件に合った検査指示書へ書き換え、探傷を実施・監督し、結果を解釈・評価する立場です。これに対してレベル3は、指示書や手順書を作成し、その妥当性を実証する立場で、規格・コード・仕様書の解釈、使う方法と手順書の指定、全レベルの技術者の監督と指導までを担います(GA1 のレベル別の責任範囲)。新規試験も再認証試験も、レベル3は筆記で問われます。
項目 | UT レベル2 | UT レベル3 |
|---|---|---|
主な役割 | 手順書を検査指示書に書き換えて実施・監督 | 手順書を作成し妥当性を実証 |
新規試験の形式 | 一次は筆記・二次は実技 | 一次・二次とも筆記 |
訓練時間 | 80時間 | 40時間 |
再認証試験の形式 | 実技 | 筆記(書類審査も選べる) |
レベル2は「渡された手順を現場の条件に合わせて動かす人」、レベル3は「その手順そのものを書き、なぜその条件でよいのかを説明できる人」です。二次試験にパートFの手順書作成問題があるのは、この役割の差をそのまま試験にしているからです。
なお、GA1 は「監督」について、該当者を常にそばに置いて見張ることではなく、他の技術者が行う作業を指示・管理して責任を持つことだと説明しています。レベル3になると現場に張り付く必要がなくなるわけでも、逆に常駐を求められるわけでもなく、責任の範囲が「自分の探傷」から「探傷の仕組み全体」へ広がる、と捉えるのが実態に近い理解です。
UT レベル3の受験要件は何か:訓練40時間と実務経験
UT レベル3を受けるには、受験申請の時点でUT のレベル2資格を持っていることが前提です。そのうえで、受験申請には訓練時間の証明が、合格後の認証申請には実務経験の証明が必要になります。要件の詳細と申請の手続きは、日本非破壊検査協会の資格認証ページと、そこから辿れる GA1 にまとまっています。
訓練時間は40時間
UT レベル3の訓練時間は 40時間で、受験前の過去5年間に満たしている必要があります(GA1 表9.1.1-1)。ここで混同しやすいのが、UT レベル2の訓練時間 80時間との関係です。レベル3の訓練時間はレベル2より短く、レベル2の値をそのまま当てはめると計画がずれます。協会の講習会案内では、この 40時間が「UT の専門コース 32時間+全方法共通の基礎コース 8時間」という内訳で示されています(日本非破壊検査協会の講習会案内)。講習会案内の 32時間だけを見て「レベル3の訓練は32時間」と読むと、GA1 の 40時間と食い違って見えるので注意してください。
実務経験は学歴で18か月か36か月
実務経験は学歴によって二通りに分かれます。技術専門学校・短大・単科大学・総合大学で工学または科学を2年以上履修した人(GA1 の区分A)は実務経験 18か月、それ以外の人(区分B)は 36か月です(GA1 表10.3-1)。区分Aで申請する場合は成績証明書の提出が求められます。
この経験月数は、受験申請の時点では問われず、試験に合格したあとの新規認証の申請で証明します。ただし新規認証の申請は試験合格後2年以内に行う必要があります。区分Bの 36か月はこの2年を超えるため、GA1 は区分Bの人に、認証申請の時点で経験月数が足りるかを試算してから受験申請するよう求めています。経験月数の数え方に迷う場合は、勤務先で認証を管理している担当者か協会に、受験申請の前に確認しておくと安心です。
一次試験(基礎試験)のパートA・B・Cでは何が問われるか
一次の基礎試験は、UT そのものではなく、材料・制度・ほかの方法の知識を問う試験です。UT の知識だけでは点が取れない点が、レベル2までの試験との大きな違いです(構成は GA1 §7.1.2)。
パートA:材料科学・製造技術
パートAは、探傷の対象になる材料と、それがどう作られるかの知識を問います。鋳造・鍛造・圧延・溶接などの製造工程と、そこで生じやすいきずの種類を結びつけて理解しているかが中心になります。UT の現場では「溶接部の内部きず」や「板材の内部きず」を日常的に扱っていても、なぜその工程でそのきずができるのかを言葉で説明する機会は多くありません。普段の探傷経験を、製造工程の側から説明し直す練習が効きます。
パートB:JIS Z 2305 の資格・認証の知識
パートBは認証制度そのものの知識です。レベルごとの責任範囲、訓練時間と実務経験の要件、有効期間と更新・再認証の仕組みなどが範囲です。教材は GA1 そのもので、制度を自分の言葉で説明できるまで読み込むのが近道です。
パートC:RT または UT を含む四つの方法の知識
パートCは、RT または UT を含む四つの方法について、レベル2の基礎知識を問います。UT を軸にしてきた人にとっては、普段扱わない方法の知識をレベル2相当まで揃えることが負担になりやすいパートです。問われるのは、各方法の原理・装置・適用範囲・長所と短所といった、レベル2の筆記で扱う範囲です。
二次試験(主要方法試験)のパートD・E・Fでは何が問われるか
二次の主要方法試験は、申請した方法(UT で受けるなら UT)に絞った試験です。一次では問われなかった UT そのものの知識が、ここでまとめて問われます(GA1 §7.1.2)。
パートD:UT のレベル3の知識
パートDは UT そのものの深い知識です。レベル2で身につけた探傷の手順を「なぜそうするのか」の側から問われると考えてください。音波の伝わり方や反射・屈折、探触子の選び方、感度の調整、エコーの評価といった、レベル2の実技で手が覚えている内容を、理屈として説明できるかが問われます。
パートE:関連分野での UT の適用
パートEは、UT を実際の対象にどう当てはめるかの知識です。対象の材料や形状、きずの種類に応じてどの技法を選び、どの規格に沿って評価するかを判断する力が求められます。自分が普段扱っている分野だけでなく、規格がどういう考え方で探傷条件を決めているかを理解しておくと、見たことのない対象の問題にも対応しやすくなります。
パートF:手順書作成問題
二次試験の中心ともいえるのが、パートFの手順書作成問題です。対象の分野に応じて UT の手順書を作成する問題です。探触子や探傷の条件、感度の決め方、記録と評価の方法といった項目を、抜けなく筋道立てて書けるかが試されます。
UT レベル3の合格率はどのくらいか

レベル3の合格率は公表されています。日本非破壊検査協会は新規資格試験の結果を会報で方法別・レベル別に出しており、2025年春期の結果では、一次の基礎試験(全方法共通)の合格率が 14.3%(合格者71名)、二次の主要方法試験は全方法の合計で申請685名のうち合格125名、合格率 19.9% でした(日本非破壊検査協会 新規資格試験結果(2025年春期))。同じ回の二次試験の合格率を方法別に並べると、UT は次の表の5方法(同じ回の ST・LT は省いています)のうち3番目で、全方法合計の 19.9% をやや下回ります。
方法 | 2025年春期 二次試験の合格率 |
|---|---|
RT | 40.0% |
PT | 22.8% |
UT | 17.2% |
ET | 15.8% |
MT | 5.0% |
この数字を読むときに気をつけたい点は三つあります。
- 合格率は、欠席者を除いた受験者のうち、その区分の全パートで70%以上を取った人の割合です。
- 二次の合格率の分母は二次の受験者(一次の合格者と、パート別に再申請した人)で、一次から通して何%が受かったかではありません。
- 回ごとに数字が動きます。1回分の結果で受かりやすさを決めつけず、2025年春期時点の目安として見るのが適切です。
数字だけを見ると厳しく感じますが、二次は「D・E」と「F」に分けて次回・次々回に受け直せるため(GA1 §8.2)、1回で全パートをそろえなくても、パート単位で積み上げていくことができます。方法別・レベル別の傾向をもう少し広く見たい人は、非破壊検査の合格率の読み方もあわせて参考になります。
UT のレベル3はほかの方法と何が違うか

UT は、探傷の条件の決め方で評価が変わりやすいため、手順書の重みがとりわけ大きい方法です。UT は材料の内部にあるきずを超音波の反射で見つける方法で、表面のきずを対象にする MT や PT と違い、きずの位置や大きさを、画面に出るエコーの位置や高さから推定します。探傷の結果が探触子の選び方、感度の合わせ方、走査のしかたに大きく左右されるので、誰が探傷しても同じ評価になるよう条件を決めておく手順書が欠かせず、パートFでもその書き込みの細かさが問われます。
同じ内部きずを見る RT と比べると、UT は放射線を使わないため、労働安全衛生法に基づく電離放射線障害防止規則による被ばく管理は手順の前提に入りません(根拠法は労働安全衛生法)。その分、UT の手順書の重心は、探傷条件の設定、評価の基準、記録の取り方をどこまで具体的に書き込むかに置かれます。UT では探傷条件の項目が多いぶん、筆記で説明する量も増えます。
レベル2の試験対策から振り返りたい人は、UT 資格の取り方と勉強法で下のレベルの要件と試験を確認できます。
手順書作成問題まで見すえたUT レベル3の勉強法
勉強の順番は、「一次の基礎試験で取りこぼしやすい範囲を埋める」と「二次の手順書作成に向けて書く練習を積む」の二本立てです。
一次は UT 以外の範囲から手をつける
一次の基礎試験は、UT を長く扱ってきた人ほど、パートAの材料・製造とパートCのほかの方法で点を落としやすい構成です。UT の知識は二次でまとめて問われるので、一次に向けては UT 以外の範囲から先に手をつけるほうが、時間の配分として無理がありません。パートBの制度の知識は、GA1 を読み込めば範囲がはっきりしているぶん、得点を安定させやすいところです。なお一次はパート別の再試験が無く、A・B・C の三つを同じ回にそろえて70%以上を取る必要があります(GA1 §8.2)。
二次は実際に手順書を書いてみる
パートFの手順書作成は、読むだけの勉強ではなかなか身につきません。職場で使っている UT の手順書や検査指示書を手元に置き、「この条件はなぜこう決めているのか」「別の対象ならどこを変えるのか」を書き出していくと、パートDの理屈とパートEの適用の知識が一緒に整理されていきます。規格の条文を自分の言葉で説明し直し、そのまま手順書の項目に落とせるかを確かめていく進め方が、試験の問い方に近い練習になります。
講習会と申請のスケジュールを先に決める
訓練時間の 40時間は、協会の講習会で満たすのが一般的な方法です。新規試験は春期と秋期の回に分かれて行われており、講習会の日程も試験の時期と連動しているため、受けたい回から逆算して、講習会・受験申請・受験の順番を早めに決めておくと慌てずに済みます。最新の試験日程と受験料は、協会の資格認証ページで確認してください。二次で届かなかったパートがあっても、次回と次々回の新規再試験では「D・E」と「F」の二つに分けて、不合格だった側だけを受け直せます(GA1 §6.2・§8.2)。1回で全パートをそろえることにこだわりすぎず、得意なパートから一つずつ固める計画にしておくと、気持ちの面でも続けやすくなります。
合格後の更新・再認証はどうなるか

レベル3に合格して認証されたあとも、資格は自動的には続きません。認証の有効期間は5年で、その先は次の二段階で資格をつないでいきます(GA1 §6.3・§10)。
- 5年目の更新:提出書類による審査を受けます。
- 10年目の再認証:資格継続調査を経て、筆記の再認証試験を受けます。レベル3は筆記試験に代えて書類審査(クレジットシステム)を選ぶこともできます。
取ったあとも制度とのつき合いが続くことを考えると、レベル3は「一度合格すれば終わり」の資格ではなく、手順書を書き、監督し、指導する立場を続けることとセットの資格だといえます。非破壊検査の資格全体の中でレベル3がどう位置づくかを確認したい人は、非破壊検査の資格一覧と受験要件の比較も参考にしてください。
まとめ:レベル3を取った先の働き方
受けるかどうかを決めるときは、区分Bなら認証申請の時点で実務経験 36か月に届くか、一次で UT 以外の範囲をどれだけ埋められるか、二次に向けて手順書を書く時間を取れるかの三点を見ておくと、判断がつけやすくなります。
レベル3を取ると、手順書の作成や技術者の監督・指導といった役割を任される場面が増えます。今の勤務先でレベル3を取り、手順書を書いて後輩を指導する立場に回るのも、十分に意味のある選択です。年収面の目安はレベル3の年収の読み方やUT 技術者の年収の実態で整理しています。
無料キャリア相談では、今の職場でレベル3を取って手順書の作成や監督に回る道と、レベル3を活かせる職場に移る道を、UT の経験年数や受験の時期とあわせて並べて比べられます。ご登録から入社まで、費用は一切かかりません。いつ、どの順番でレベル3を目指すかは、手順書を書く側に立ちたいと思えたときに、自分のペースで決めていけば大丈夫です。
