電験一種を調べはじめた人がまず知りたいこと
第三種や第二種の免状を持っていると、その上があることは知っていても、自分の仕事に本当に要るのかどうかは調べ始めるまで分からないままになりがちです。電気主任技術者の三つの区分のうち、監督できる設備に電圧の上限が引かれていないのは第一種だけで、この区分は現場では通称として「電験一種」と呼ばれます。
その範囲の広さは、試験の構成の側にも現れています。第一種の試験は一段では終わらず、一次試験を通過した先に二次試験が置かれた二段構えになっています。
本稿は 2026 年 9 月時点で電気技術者試験センターが公開している区分・試験構成の記述をもとにしています。制度や公表値は年度ごとに更新されるため、受験を具体的に検討する段階で参照する一次情報は当年度の受験案内です。
なお、電気主任技術者という資格そのものの成り立ち、選任義務の全体像、第三種から第一種までの並びについては 電気主任技術者とは?選任義務・第一種〜第三種の違い・試験まで で扱っています。
電験一種とは何ができる資格なのか

電気技術者試験センターは、第一種電気主任技術者が保安監督を行える範囲をすべての事業用電気工作物と示しています(電気技術者試験センター「電気主任技術者について」)。区分の説明としては一行ですが、実務に置き換えると重い一行です。
事業用電気工作物は電気事業法上の区分で、高圧・特別高圧で受電する工場やビル、発電所や変電所などの設備が含まれます。設置者の側には、その設備の工事・維持・運用に関する保安を監督させるために電気主任技術者を選任する義務があり、この義務の根拠は電気事業法にあります(e-Gov 法令検索「電気事業法」)。保安の監督者を事業場ごとに選任するという建て付けは電気に限った話ではなく、危険物保安監督者の選任要件と対象施設の確認方法と読み比べると、選任という仕組みの共通点が見えてきます。
工事・維持・運用という三つの局面すべてが、同じ人の監督下に入ります。新しく設備を入れる工事の局面だけでなく、日常の巡視や年次点検といった維持の局面、そして受電設備を運転している日々の局面まで、保安上の判断が求められる場面はいずれも監督の対象です。工事の立会い、点検記録の確認、不具合が出たときの停止判断といった業務局面が、免状を持つ人の役割に含まれます。どの業務がどこまで含まれるかは事業場の規模や設備構成で変わるため、実際の線引きは選任される事業場の保安規程で確認する部分が残ります。
電気工事士とは、根拠となる法律が電気事業法と電気工事士法で分かれ、役割も保安の監督と工事の作業で分かれます。同じ電気の資格でも、制度が求めている立場が違います。
「最上位区分」と呼ばれる状態は、実務では免状の区分が理由で監督できない設備が出てこない、という形で現れます。
第二種との違いは、どの電圧から出るのか
同センターの区分説明は、三区分の監督範囲をそれぞれ次の形で定めています。
- 第一種:すべての事業用電気工作物(電圧の上限は示されていない)
- 第二種:電圧が17万ボルト未満の事業用電気工作物
- 第三種:電圧が5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所を除く)
上位区分ほど、外れる制限が減っていきます。三種から二種へ上がるときに外れるのは電圧の制限と発電所出力の除外規定、二種から一種へ上がるときに外れるのは最後に残った上限です。一種で増えるのは、この最後の一段だけです。
一種と二種を分けているのは仕事の種類ではなく、扱える設備の電圧帯です。保安監督という役割の中身は区分が変わっても同じ方向を向いていて、変わるのはその役割を引き受けられる設備の範囲だけです。
一種の価値は、どの設備を見る立場にいるかで変わります。発電・送変電や大規模な需要家の設備を見る側にいるなら、一種は選任の可否そのものに関わります。一般的なビルや工場の受電設備を見ている側では、免状の区分が理由で選任できない設備に当たる場面はそう多くありません。必要になる場面は狭いが、その場面では代わりが利かない資格だと捉えておくと、判断がぶれにくくなります。
一種が必要になる条件は、17万ボルト以上を含む設備で選任される立場に立つかどうかの一点です。
一次試験と二次試験:電験一種が二段構えになっている形

試験の構成も区分によって違います。第一種と第二種には一次試験と二次試験があり、第三種は一次試験のみです。同センターの区分説明は、この点でも第三種と上位二区分を分けています。
第三種の勉強をしたことがある人にとって、この差は学習計画の立て方そのものを変えます。第三種は一次試験を通れば免状に届きますが、一種と二種ではそこがスタートラインで、別の形式の試験がもう一つ待っています。計画を一段ではなく二段構えで考える必要がある、ということです。
試験制度の全体像で見ると、電気主任技術者試験は第三種までが一段、第一種・第二種でもう一段増える構成です。三種から順に積み上げてきた人が「二種から急に別物になる」と感じるのは、科目が難しくなるという以前に、通過しなければならない関門が一つ増えるからです。
一次試験の4科目と科目別合格制をどう使うか
一次試験の科目は四つです。
- 理論
- 電力
- 機械
- 法規
科目名の並び自体は第三種と共通で、科目別合格制が採られています。4科目を同じ年度に一度で通し切る必要は無い、という制度です。
働きながら受ける人にとって、この制度は現実的な意味を持ちます。その年度に力を入れる科目を決めて、取れた科目から確定させていく受け方が制度上は成り立つからです。科目別合格がどの範囲まで持ち越せるかという運用の条件は年度ごとに定められる部分なので、年度をまたぐ計画ほど、この取扱いを先に確かめておく価値が上がります。
一種を狙う場合、一次の受け方には二次を見据えた判断も入ります。科目別合格制を使って年度をまたぐほど、一次を抜けた年に二次へ向かう時間をどう確保するかという問題が後ろにずれていきます。一次を短い期間でまとめて通して二次に集中する組み方と、一次を分割して長く構える組み方はどちらも成立しますが、二次までの全体像を描いてから選ぶ性質の分岐です。
科目名が第三種と共通である点は、取り違えやすいところです。名前が同じでも、第三種で通った科目の学習がそのまま一種の一次試験に横滑りするとは限りません。同じ「理論」「機械」という看板の下で、区分に応じた水準が設定されています。
二次試験の「電力・管理」「機械・制御」が置かれている理由
二次試験の科目は二つです。
- 電力・管理
- 機械・制御
一次の4科目が、二次では2科目に束ね直されている形です。電力が管理と一緒になり、機械が制御と一緒になる。一次では別々に問われていた領域が、二次では電力系統をどう管理するか、機械をどう制御するかという、より運用に寄った束ね方で扱われる並びです。保安監督という役割が個別の知識よりも設備全体の見方に関わることを考えると、この束ね方には筋が通っています。
科目数が4から2に減ることを「負担が半分になる」と読むのは、おそらく逆です。束ねられたということは、一つの設問が複数の領域にまたがりうるということでもあります。一次で科目ごとに切り分けて詰めた知識が、二次では領域をまたいで問われます。
二次試験は一次を通過した先にある関門なので、一次の学習を進めながら二次の形式を早めに見ておくと、二段構えの計画が立てやすくなります。
電験一種の難易度は、何で決まっているのか
難易度の中身を決めているのは、まず関門の数です。第三種は一次試験を通れば免状に届きますが、第一種は一次試験を通過したうえで二次試験まで抜ける必要があり、越える関門が一つ多くなります。
次に、その二つの関門の性格が違います。一次は理論・電力・機械・法規の4科目で科目別合格制が採られているため、年度をまたいで分割する余地があります。一方の二次は電力・管理と機械・制御の2科目で、一次とは別の形式の試験として置かれています。分割して積み上げられる関門と、一次を抜けた先で改めて構え直すことになる関門が続く。学習の山が二つあり、しかも性格が違うという構造が、区分の中で最も広い監督範囲に対応する試験の要求水準を形づくっています。
一方、合格率や合格基準といった数値は年度ごとに動きます。年度ごとに更新される数値なので、当年度の受験案内と公表されている実施結果を直接見るのが確実です。どちらも 電気技術者試験センターの公式サイトに置かれています。受験者数や合格率にあたる数値は実施結果の公表資料に、試験の日程や受験手数料は当年度の受験案内に、それぞれ該当する情報があります。
数値を引くときに一緒に見たいのが、その数値の年度です。難易度に関する情報は、書かれた時点と参照しているデータの年度がずれていることがあります。2026 年に書かれた記事が数年前の実施結果を引いている、という形です。数字そのものより、その数字がいつの年度のものかを先に見ると、いまの判断材料として使えるかどうかが分かります。
受験資格と年収は、どの資料で確かめられるか
電験一種を調べていると、受験資格と年収の二つで情報が錯綜しやすくなります。どちらも、確かめるべき資料がはっきり決まっている論点です。
受験資格
電気技術者試験センターの資格概要ページには、第一種・第二種・第三種のいずれについても受験資格の要件は記載されていません。示されているのは区分ごとの監督範囲と試験構成です。受験できる条件を確定させたい場合、参照先は当年度の受験案内になります。免状の交付についても、試験に合格した後の手続きとして公式サイトの案内が一次情報にあたります。
年収・求人
年収のほうは、資格名で公的統計を引こうとすると行き止まりになります。厚生労働省の 賃金構造基本統計調査の職種分類には、「第一種電気主任技術者」と同名の区分がありません。資格の名前で年収が公表されているわけではない、ということです。
代わりに使えるのが、自分の職務内容に対応する職種を選んで統計を引く方法です。job tag(職業情報提供サイト)は電気主任技術者を、電気工事士・ビル施設管理・電気技術者といった複数の職業の関連資格として掲げています。自分の日々の仕事がこのうちどれに近いかを決めるところが出発点になります。
そのうえで賃金構造基本統計調査を引くときに指定する軸は、産業分類・企業規模・経験年数の三つです。電気保安を担う職務は、勤め先が電力会社なのか、設備管理を受託する事業者なのか、自社設備を持つ製造業なのかで産業分類が変わり、同じ職務でも企業規模の区分で水準が動きます。経験年数の軸まで指定して、はじめて自分の位置に近い行が出てきます。資格の数値ではなく職務の数値として年収を捉え直す、というのがこの引き方です。
求人のほうも、資格名で検索するより「どの電圧帯の設備を扱う事業場か」で見たほうが、一種が要るかどうかの判断には直結します。
第二種で足りるのは、どこまでか
一種を目指すかどうかの判断は、憧れや難易度の話ではなく、自分が関わる設備の電圧帯に紐づいた具体的な問いになります。立ち位置は、おおよそ三つに分かれます。
第二種までで役割が完結する場合
17万ボルト未満の設備しか視野に入っていないのであれば、選任という観点では第二種で役割は完結します。受変電設備を持つ一般的なビルや工場、商業施設や中規模の生産拠点は、多くがこの範囲に収まる類型です。この場合、一種の取得は「今の職務に必要だから」という理由では説明しにくくなります。
一種でなければ引き受けられない場合
この立場に立つのは、発電所や変電所、送変電設備を持つ事業者、あるいは特別高圧で受電する大規模な生産拠点で、保安監督者として名前が挙がる場面です。
選任が動くきっかけは、人よりも設備の側にあることが多くなります。設備を新設・増設したとき、事業場を統廃合したとき、受電方式を変えたときに、必要な区分そのものが変わることがあります。選任は事業場ごとに行われるため、同じ会社に勤めていても配属先によって求められる区分が違う、という状態も生じます。選任されている人が異動や退職で抜けるには後任の目処が要るため、前任が動きにくい期間が生まれやすい構造もあります。免状は取得までに年単位の時間がかかる性質のものなので、必要になってから動くと間に合わないことがあります。学習を置く時期は、必要になる時期から逆算して決めることになります。
今は要らないが、選任できる範囲の上限を先に外しておきたい場合
判断がつきにくいのは、この中間にいるときです。今すぐ必要ではないが、選任できる範囲の上限を先に外しておきたい、という動機は十分に合理的です。ただし一種は二つの関門を越える分だけ取得コストが大きいので、「いつまでに、何のために」を決めずに走り出すと、学習が長期化しやすい側面もあります。
起点も人によって違います。第三種から順に積んできた人は、科目の学習を続けてきた流れをそのまま二種・一種に接続できる位置にいます。実務経験が長く、免状を後追いで揃えている人の場合は、現場で見てきた設備の電圧帯がそのまま判断材料になるので、「どこまで必要か」を先に確定させたほうが早くなります。
電気保安以外の保安・検査系の資格と横に並べて比べたい場合は、非破壊検査の資格一覧と難易度が参考になります。訓練時間と実務経験で受験要件を比較している記事なので、分野をまたいで「どの資格がどれだけの投資を要求するか」を同じ物差しで見たいときに使えます。
一種を目指すかどうかを決める順番
一種が自分に要るかどうかは、次の四つを上から順に確認していくと決まります。
- 自分が関わっている、あるいは関わりたい事業場の設備が、どの電圧帯にあるのかを確認する
- その設備を現在の免状の区分で選任対象にできるのかを見る
- 一種でなければ引き受けられない場面が、自分のキャリアの射程に実際に入っているのかを考える
- 一次と二次の二段構えを置ける時期があるかを見積もる
最後の一項目が、いちばん見積もりにくいところです。一種は一次試験を通過した先に二次試験が置かれているので、学習の期間は「一次までの期間」と「一次を抜けてから二次までの期間」の二つに割れます。科目別合格制を使って一次を年度またぎで揃える組み方を選ぶと、一次が完了する年度が後ろにずれ、二次に向かう時期もその分だけ後ろに動きます。一次に何年度を充てるかを決めると、二次に向かう年度がそれに連動して決まる。この対応関係を自分のカレンダーに置けると、「二段構えを置ける時期があるか」が具体的な問いに変わります。
一種が活きるかどうかは、資格そのものより、どの現場に立つかで決まる部分が大きくなります。設備の電圧帯という条件は勤め先が変われば変わるので、自分の経験がどの電圧帯の現場に届くのかは、外から眺めているだけだと見えにくいところです。
今の経験でどの領域の現場が見えるのか、一種が必要になる設備を扱う職場が現実的な選択肢として並ぶのか。転職するかどうかは、そこを整理し直してから決めれば大丈夫です。今の職場で一種が要る場面が来るのか、来るとしていつ頃かが見えると、一次と二次をどの年度に置くかも決めやすくなります。設備の電圧帯とキャリアの接続を一緒に棚卸ししたい方は、無料キャリア相談をご利用ください。
