非破壊検査レベル3の「専門試験」とは何か
レベル2で現場経験を積み、次にレベル3を考え始めた人がまず迷うのが「専門試験」の中身です。JIS Z 2305 に基づく日本非破壊検査協会(JSNDI)の認証制度では、方法ごとの専門的な試験は主要方法試験(パートD・E・F)と呼ばれ、レベル3の二次試験にあたります。
レベル3の資格試験は、一次の基礎試験と二次の主要方法試験の二段構えです。どちらも筆記試験で、各パートとも70%以上の得点で合格になります(JSNDI「JIS Z 2305:2013 認証制度の案内」GA1・2026年7月改訂版)。レベル1・2の二次は実技だったため、レベル3の二次も実技だと思い込みがちですが、実際には筆記のみです。準備の中心は、手を動かす練習から、知識を説明し文書にする練習へ移ります。
一次の基礎試験と二次の主要方法試験はどう違うか
基礎試験と主要方法試験は、問われる範囲がはっきり分かれています。基礎試験は申請する方法に関係なく共通の内容で、主要方法試験は申請した方法ごとに別の問題になります。
一次:基礎試験(パートA・B・C)
基礎試験は三つのパートで構成されています。パートAは材料科学と製造技術の知識、パートBは JIS Z 2305:2013 の認証スキームに基づく資格と認証の知識、パートCは四つの方法(RT 又は UT を含む)についてのレベル2の基礎知識です(GA1 §7.1.2)。自分の得意な方法だけでなく、普段あまり触れない方法のレベル2相当の知識まで求められる点が、基礎試験の負担になりやすいところです。現場で扱わない方法は、装置の原理と得意・不得意なきずの種類を自分の方法と比べながら覚えると、断片的な暗記になりにくくなります。
二次:主要方法試験(パートD・E・F)
主要方法試験は、申請した方法についての試験です。パートDはその方法に関連するレベル3の知識、パートEは関連分野での方法の適用、パートFは関連分野での手順書作成問題です(GA1 §7.1.2)。パートFは、レベル2が手順書を作業条件に合わせた検査指示書に書き換える立場だったのに対し、レベル3は手順書そのものを作る立場になることを反映した問題です。
専門試験の対策は、自分の方法の原理と規格を体系的に説明でき、手順書として文書に落とせる状態をつくることです。
レベル3の受験資格は?レベル2の保持と方法別の訓練時間・実務経験
レベル3の新規受験には、申請する方法のレベル2資格の保持が前提になります。そのうえで、方法ごとに決められた訓練時間と、学歴によって二つに分かれる実務経験の月数を満たす必要があります。レベル2保持の要件は GA1 §9.1 に定められており(GA1 §9.1)、資格試験の案内やお知らせは JSNDI の資格・認証のページから確認できます。
レベル3の訓練時間と実務経験
訓練時間は GA1 の表9.1.1-1、実務経験の月数は表10.3-1 に方法別に定められています。実務経験は学歴によって A と B の二つに分かれ、A は技術専門学校・短大・単科大学・総合大学で工学または科学を2年以上履修した人(成績証明書の提出が必要)、B はそれ以外の人です(GA1 表9.1.1-1・表10.3-1)。
方法 | レベル3の訓練時間 | レベル3の実務経験(A) | レベル3の実務経験(B) |
|---|---|---|---|
RT | 40時間 | 18か月 | 36か月 |
UT | 40時間 | 18か月 | 36か月 |
ET | 48時間 | 18か月 | 36か月 |
MT | 32時間 | 12か月 | 24か月 |
PT | 24時間 | 12か月 | 24か月 |
ST | 20時間 | 12か月 | 24か月 |
LT | 72時間 | 18か月 | 36か月 |
表で注意したいのは、レベル3の訓練時間がレベル2より短い方法があることです。RT・UT はレベル2が80時間なのに対し、レベル3は40時間です。レベル2の数字をそのままレベル3に当てはめないようにしてください。また MT と PT はレベル2までは同じ訓練時間ですが、レベル3では MT が32時間、PT が24時間と値が分かれます。JSNDI の講習会案内では、この時間が「方法ごとの専門コース」と「全方法共通の基礎コース」に分けて書かれていることがあり、専門コースの時間だけを見ると表の値より短く見えます。共通の基礎コースを足した合計が表の値です。
B に当たる人は、受験のタイミングに気をつける必要があります。資格試験に合格してから新規認証を申請できる期間は2年なので(GA1 §10.4)、合格した時点で経験月数が大きく足りないと、申請期限までに要件を満たせない可能性があります。受験を申し込む前に、合格後2年以内に必要な月数へ届くかを逆算しておくと安心です。
主要方法試験の合格率はどのくらいか

JSNDI は新規資格試験の結果を、方法別・レベル別に公表しています。2025年春期の結果では、レベル3の一次(基礎試験)の合格率は14.3%、二次(主要方法試験)は申請685名に対して合格125名で、合格率は19.9%でした(JSNDI 新規資格試験結果(Vol.74 No.9))。ここでは本稿で方法別の内訳まで確認した2025年春期の結果を使います。方法別に見ると、二次の合格率には大きな開きがあります。
方法 | 二次の合格率(2025年春期) |
|---|---|
RT | 40.0% |
UT | 17.2% |
MT | 5.0% |
PT | 22.8% |
ET | 15.8% |
ST | 100.0% |
LT | 60.0% |
この数字には三つの前提があります。
- 合格率は、欠席者を除いた受験者のうち、D・E・F の全パートで70%以上を取った人の割合です(新規資格試験結果の表の注記)。一つでも基準に届かなければ合格になりません。
- 二次の母数は、一次合格者にパート別の再申請者を加えた「二次試験の受験者」で、一次から二次までを通した最終的な合格率ではありません。
- 受験者が少ない方法は一回の結果が大きく振れます。ST・LT の高い値も MT の低い値も2025年春期1回分の結果で、毎回この値になるとは限りません。
それでも、二次全体で2割前後という水準は、レベル2の延長の感覚で臨むと届きにくい試験だということを示しています。合格率の読み方は非破壊検査の合格率をレベル別・方法別に整理した記事でも詳しく扱っています。
パートD・E・Fはそれぞれどう勉強するか
主要方法試験は、パートごとに求められる力が違います。同じ時間をかけるなら、パートの性格に合わせて勉強の仕方を変えたほうが効率的です。全体の学習時間の目安は非破壊検査の勉強時間の記事も参考になります。
パートD:方法のレベル3知識
パートDの準備は、自分の方法の原理・装置・技法・評価をレベル2より一段深く説明できるようにすることが中心です。レベル2の教科書で「こう操作する」と覚えていた手順について、「なぜその条件なのか」「条件を変えると結果がどう変わるのか」を自分の言葉で説明できるかを確認しながら読み直すのが基本です。現場で当たり前にしている設定値ほど、理由を説明できないことが多いものです。読み直しながら、説明に詰まった項目だけを書き出して自分用の弱点リストをつくり、そこを規格や参考書で埋めていくと、限られた時間でも穴を減らしやすくなります。レベル2の受験時に使った教材を土台にしつつ、レベル3向けに深掘りされた解説へ広げていく順番が無理のない進め方です。
パートE:関連分野での適用
パートEでは、方法を実際の対象物にどう当てはめるかが問われます。溶接部・鋳造品・圧延材など、対象によってきずの出方や適した技法が変わるため、自分が普段扱う対象だけでなく、扱ったことのない対象でどう考えるかを整理しておく必要があります。基礎試験のパートA(材料科学・製造技術)の知識がここで生きてくるので、一次の勉強を二次の土台として位置づけると無駄がありません。
パートF:手順書作成問題
パートFは知識を知っているだけでは得点にならず、適用規格・対象・装置・技法・判定基準・記録といった項目を、抜けなく筋道立てて文書にする力が問われます。三つのパートの中で、もっとも独学で準備しにくく、時間を取っておきたいパートです。
手順書作成問題に備えて日常業務をどう使うか

パートFの準備で一番の材料になるのは、職場にある実際の手順書です。レベル2として検査指示書を書いたり、手順書に沿って作業したりしているなら、その手順書が「どの規格の、どの条項を受けて、どういう順に書かれているか」を分解して読むことから始めると、構成の型が見えてきます。
次に、構成の型を使って、自分で白紙から手順書を書いてみます。対象や条件を少し変えた想定で書き直すと、規格のどこを確認し直す必要があるかが分かり、パートEの準備にもつながります。書いたものを社内のレベル3に見てもらえる環境があれば、指摘を受けて直す経験はそのまま試験対策になります。
見てもらえる人が社内にいない場合でも、規格の要求事項と自分の手順書を一項目ずつ突き合わせて、抜けている項目がないかを確認するだけで精度は上がります。時間を測って書く練習を何度か挟んでおくと、本番で時間が足りなくなる事態も防ぎやすくなります。練習は五つの段階に分けられます。
- 職場の手順書を、規格の条項との対応に分解して読む
- 構成の型を使い、白紙から自分で手順書を書く
- 対象や条件を変えた想定で書き直す
- 規格の要求事項と一項目ずつ突き合わせて抜けを確認する
- 時間を測って書く練習を挟む
どの方法からレベル3を受けるべきか
レベル3は方法ごとの資格なので、どの方法から受けるかを決める必要があります。判断の軸は三つあります。
- レベル2をすでに持ち、実務経験を積んでいる方法か
- 今の職場や目指す職場で、レベル3が求められる方法か
- 訓練時間と実務経験の要件を、いつ満たせるか
方法によって現場の安全管理の枠組みも変わります。たとえば RT では、労働安全衛生法(e-Gov 法令検索)に基づく電離放射線障害防止規則が被ばく管理を定めており、JSNDI の資格とは別の法令上の管理が求められます。手順書にはこうした法令上の要求も織り込む必要があるため、方法を選ぶ際に把握しておきたい点です。
方法ごとの試験の詳細は、UT レベル3試験、MT レベル3試験、PT レベル3試験、ET レベル3試験の各記事で個別に整理しています。資格全体の体系や他の方法との比較から考えたい場合は、非破壊検査の資格一覧から見ると全体像がつかみやすいはずです。
レベル3を取った後の仕事と更新・再認証はどうなるか

レベル3は、試験設備や職員についての責任、指示書と手順書の作成とその妥当性の実証、規格や仕様書の解釈、使用する方法と手順書の指定、そして全レベルの技術者の監督と指導を担う立場です(GA1 §5)。現場で検査を実施する役割から、検査の仕組みそのものを設計し、品質に責任を持つ役割へと仕事の中身が移っていきます。客先や監査への説明、社内のレベル1・2の指導といった、技術を言葉にして伝える場面も増えていきます。
そのため、レベル3を取った後のキャリアは、検査会社での技術管理や品質保証、メーカーの社内検査部門での手順書整備、後進の育成など、管理や設計に近い方向へ広がりやすくなります。年収との関係はレベル3の年収を役職や企業規模から整理した記事で詳しく扱っています。
取得後も資格は自動的に続くわけではありません。認証の有効期間は5年で、5年目に提出書類による更新審査、10年目に再認証があります。レベル3の再認証試験は筆記で、筆記試験に代えて書類審査(クレジットシステム)を選ぶ方法もあります(GA1 §6.3・§10)。レベル3として実務を続けながら知識を更新し続けることが前提の資格だと考えておくとよいでしょう。
まとめ:専門試験の準備とキャリアの考え方
非破壊検査レベル3の専門試験は、二次の主要方法試験としてパートD・E・Fの三つで構成され、すべて筆記で各70%以上が合格の基準です。受験にはその方法のレベル2保持が前提で、訓練時間と実務経験は方法と学歴によって変わります。二次の合格率は2025年春期で全体19.9%と低く、全パートで70%以上が必要なうえ、手順書作成問題は知識だけでは得点にならないため、その備えを早めに始めておきたいところです。
レベル3を目指すことは、今の職場で役割を広げる道にも、手順書の整備や品質保証を担える職場へ移る道にもつながります。どの方法から受けるか、経験月数がいつ要件に届くか、レベル3を求める職場がどこにあるかは、手持ちの資格と経験を並べてみると判断しやすくなります。無料キャリア相談では、手持ちのレベル2と経験月数から、どの方法をいつ受けられそうか、レベル3を求める職場がどこにあるかを一緒に確認できます。ご登録から入社まで、費用は一切かかりません。転職するかどうかは、話してから決めれば大丈夫です。
