浸透探傷試験(PT)資格の取り方|PDとの選び方・訓練時間・実技対策

溶接試験板の白い現像剤の上に赤い線状の指示模様が浮かび、浸透液・洗浄液・現像剤のスプレー缶が並ぶ作業台
目次▼

浸透探傷試験(PT)の資格はどう取るのか

浸透探傷試験(PT、Penetrant Testing)の資格を取りたいと考えて調べ始めると、「訓練時間」「実務経験」「一次試験」「二次試験」「新規認証申請」と、似たような言葉が次々に出てきて、何から手を付ければいいのか分かりにくくなります。これから PT を受ける現場技術者や、非破壊検査の仕事に入ったばかりで最初の資格に PT を考えている人なら、なおさらです。

PT は、表面に開口したきずに浸透液を染み込ませ、現像剤で指示模様として浮かび上がらせて見つける検査方法です。その資格は、日本非破壊検査協会(JSNDI)が JIS Z 2305 に基づいて行う認証制度で取ります。試験に受かっただけでは資格証明書は発行されず、合格後に実務経験を証明して登録する点が、他の資格試験と大きく違うところです(JSNDI 資格・認証の案内)。

PT と限定区分の PD のどちらを受けるか、自分に必要な訓練時間と経験月数はどれだけか、試験のどこでつまずきやすいか、合格後の更新やレベル3 をどう見通すか。どれも制度の一次情報で答えが決まります。PT の仕事内容やキャリア全体を先に知りたい人は、浸透探傷試験(PT)の仕事と資格・キャリアパスのガイドもあわせて読むと位置づけがつかみやすくなります。

PTとPDのどちらを受けるか:区分の違いと選び方

浸透探傷の資格には、JIS Z 2305 の 8 つの NDT 方法の一つである「浸透探傷試験(PT)」と、限定 NDT 方法として別枠に置かれている「溶剤除去性浸透探傷検査(PD)」の 2 種類があります。PT は浸透探傷の技法全体を対象にした区分で、PD は名前のとおり、浸透液をふき取りと洗浄液で除去する溶剤除去性の技法に絞った区分です。同じ限定区分には水洗性浸透探傷検査(PW)もありましたが、2015 年春期試験で新規試験を終えています(JSNDI 認証制度の案内 GA1(2026 年 7 月版))。

どちらを選ぶかは、いまの職場で使っている技法と、今後担当したい仕事の幅で決めるのが現実的です。スプレー缶の浸透液・洗浄液・現像剤を使って溶接部や機械部品を点検する現場なら、PD の範囲で日常業務が回ることが多いでしょう。一方、水洗性や後乳化性の技法、蛍光浸透探傷の設備を使う工場や、検査会社として幅広い案件を受ける立場なら、技法全体を扱える PT のほうが担当できる範囲は広がります。

資格登録件数は PT が PD のおよそ 3 倍で、どちらもレベル2 が大半を占めています。JSNDI が公表している 2025 年 4 月 1 日時点の件数は、PT が合計 22,784 件、PD が合計 7,625 件です(NDT フラッシュ Vol.74 No.9)。

区分

レベル1の登録件数

レベル2の登録件数

レベル3の登録件数

PT

2,438 件

18,562 件

1,784 件

PD

2,046 件

5,579 件

区分なし

PD にはレベル3 の区分がありません。将来レベル3 まで進んで検査手順の設計や技術者の指導に関わりたいなら、最初から PT を軸にしておくほうが遠回りを避けやすくなります。逆に、まず現場で一人前に検査を回せるようになることが目標なら、訓練時間の短い PD から入り、あとで PT に広げる順番も選べます。MT と PT のどちらを先に取るかで迷っている人は、MT と PT の資格・需要・キャリアの比較が判断材料になります。

PTの受験資格は何が必要か:訓練時間・視力・実務経験

新規に受験するための条件は、訓練時間、近方視力と色覚、そして認証登録の段階で必要になる実務経験の 3 つです。学歴や年齢の制限はなく、未経験でも訓練時間と視力の条件を満たせば受験申請できます(GA1 §9 受験申請資格)。

訓練時間

訓練は過去 5 年間に受けたものが対象で、NDT 方法ごとに訓練実施記録を作って提出します。表の「レベル2」はレベル1 を保持している人、「直接受験」はレベル1 を持たずにレベル2 を受ける人の値です(GA1 表9.1.1-1・表9.1.1-2・表10.3-1)。

区分とレベル

訓練時間

実務経験

PT レベル1

16時間

1か月

PT レベル2

24時間

3か月

PT レベル2 直接受験

40時間

4か月

PT レベル3

24時間

12か月・24か月

PD レベル1

8時間

1か月

PD レベル2

16時間

2か月

PT レベル3 の実務経験は学歴で分かれ、技術専門学校・短大・大学などで 2 年以上工学または科学を履修した人は 12 か月、それ以外の人は 24 か月です(MT のレベル3 は訓練時間が PT と異なるので、まとめて覚えないよう注意が必要です)。

近方視力と色覚

視力は裸眼の数値基準ではなく、Times New Roman N4.5 の文字(Jaeger number 1 でも可)を 30cm 以上離れて片目または両眼で読めることが条件で、眼鏡やコンタクトでの矯正が認められています。色覚は、申請する方法で使う色やグレイスケールのコントラストを見分けられることが条件です。視力・色覚とも雇用主が証明し、近方視力の証明は過去 1 年以内のものが必要です(GA1 §9.1.2)。PT は赤い浸透液と白い現像剤のコントラストや、暗い場所での蛍光指示模様を見る方法なので、色覚の証明は形式だけのものではありません。

実務経験

実務経験は受験申請の時点では問われず、二次試験に合格したあとの新規認証申請で証明します。見落としやすいのが、新規認証申請は試験合格後 2 年以内に出す必要があることです。その期限までに表の経験月数を満たせないと、資格証明書を受け取れません。また、訓練の時間は実務経験には数えられないので、訓練と経験は別々に積む必要があります(GA1 §9.1.3・§10.1)。

申請から資格証明書が届くまでどう進むか

新規試験から資格証明書の発行までは、次の 7 段階です(GA1 付録 A 資格登録の流れ)。

  1. 訓練を受け、訓練実施記録と集計表をまとめる
  2. 雇用主に近方視力と色覚を証明してもらう
  3. 受験申請書に訓練と視力の証明を付けて申し込み、受験資格の審査を受ける
  4. 一次試験(筆記)を受け、合格すると二次試験の案内が届く
  5. 二次試験(実技)を受け、合格すると新規認証申請書が届く
  6. 実務経験を証明して新規認証申請を出し、書類審査に適格となれば認証申請料を払い込む
  7. 資格登録が行われ、資格証明書が届く(有効期間は 5 年)

試験は春期・秋期の期ごとに実施され、各回の日程、受験料、申請の受付期間は JSNDI の資格試験の案内で公表されます。合格後には、受験料とは別に認証申請料の払い込みがあります。訓練の内容と記録の付け方は、GA1 が参照先に挙げている「新規試験用訓練についての案内(EA3-3)」に定められており、講習会で受ける場合も勤務先で訓練を受ける場合も、この案内に沿った訓練実施記録をそろえることになります(GA1 §9.1.1・付録 A)。

一次または二次で不合格になった場合は、次回と次々回の試験に限り新規再試験として受けられます。二次で落ちたときは一次が免除され、二次から受け直せます。再試験では受験申請時の添付書類も不要になるので、一度不合格になっても訓練からやり直す必要はありません(GA1 §6.2)。

流れの中で見落としやすいのは、試験の合否と資格の登録が別の手続きになっている点です。会社で受験する場合は、申請書類や経験証明を誰が用意するかを、受験申請の前に上司や教育担当と決めておくと手戻りが減ります。

PTの試験では何が問われるか:一次の筆記と二次の実技

部品表面のきずに浸透液が入り、除去と現像を経て赤い指示模様が現れるまでを順に並べた図

レベル1 とレベル2 の新規試験は、一次が筆記(一般試験と専門試験)、二次が実技です。合否はどちらも点数で決まり、一般試験と専門試験の各パート、実技の各試験体でそれぞれ 70% 以上を取ることが合格の条件です。レベル2 の二次では、実技に加えて検査指示書の作成でも 70% 以上が必要になります(GA1 §7.1.1)。合計点で足りていても、一つのパートが基準に届かなければ不合格になる仕組みです。

PT という方法の特徴

PT は、表面に開口したきずに浸透液を染み込ませ、余分な浸透液を除去したあとで現像剤を塗り、きずから染み出した浸透液を指示模様として見つける方法です。手順は前処理、浸透処理、除去処理、現像処理、観察の順に進み、どの工程を雑にしても結果が変わります。材料が磁性体かどうかに関係なく使える一方、表面に開口していないきずは見つけられず、内部のきずには UT や RT が使われます。

この「手順がそのまま結果を左右する」性質が、試験の出題にも表れます。筆記では、染色浸透探傷と蛍光浸透探傷の違い、水洗性・後乳化性・溶剤除去性という除去方法の違い、浸透時間や現像時間の考え方、疑似指示模様の見分け方といった、工程ごとの理由を問う内容が中心になります。実技では、決められた手順を順番どおりに実施し、現れた指示模様を正しく分類して記録できるかが見られます。

作業環境と安全

浸透液・洗浄液・現像剤はエアゾール缶の製品が多く、溶剤の蒸気がこもりやすい場所での作業になることがあります。労働安全衛生法第 22 条はガスや蒸気による健康障害を防ぐ措置を、第 23 条は作業場の換気などの措置を事業者に求めており、現場の換気や火気管理のルールはこうした法令上の義務の上に組み立てられています(労働安全衛生法)。実技試験の準備でも、換気と保護具の扱いを手順の一部として身に付けておくと、試験後の現場でそのまま役立ちます。

PTの合格率はどのくらいか:難所は一次の筆記

PT・PDのレベル別合格率の棒グラフ。どの区分も一次の筆記が二次の実技より低く、レベル2の一次は4割台

2025 年春期の新規試験では、PT・PD のどの区分も一次(筆記)の合格率が二次より低く、レベル2 は PT・PD とも 4 割台でした。合格率は、欠席者を除く受験者のうち合格基準をすべて満たした人の割合です(NDT フラッシュ Vol.74 No.9 2025 年春期新規資格試験結果)。

区分とレベル

一次の合格率

二次の合格率

PT レベル1

63.0%

72.4%

PT レベル2

43.5%

61.8%

PD レベル1

67.1%

82.6%

PD レベル2

43.2%

67.8%

PT レベル2 は一次の申請が 1,009 人と、同じ期のレベル2 では UT に次いで多い区分で、実技に進む前の筆記でふるい落とされる人が少なくありません。二次の合格率は「二次試験を受けた人」のうちの割合で、一次から通しで受かる割合ではありません。

合格率は期ごとに変動する値です。ほかの方法やレベルとの比較は、非破壊検査の合格率をレベル別・方法別に整理した記事で確認できます。

PTの一次・二次を通すための勉強の進め方

合格率の傾向からすると、PT の対策は「筆記を落とさないこと」と「実技の手順を体で覚えること」の 2 本柱になります。普段から現場で PT をしている人ほど、実技は何とかなると考えて筆記の準備が薄くなりがちです。

一次(筆記)の対策

パートごとに足切りがあるので、得意な分野で点を稼いで苦手を補う戦略は使えません。一般試験は浸透探傷の原理や材料・きずの基礎、専門試験は規格や手順の適用が中心になるため、訓練で使ったテキストを工程の順番に沿って読み直し、「なぜその処理をするのか」を自分の言葉で説明できるかを確かめるのが近道です。浸透時間を守らないと何が起きるか、除去しすぎるとどうなるか、といった問いに答えられれば、選択肢の言い回しが変わっても対応できます。

数値や用語は、染色と蛍光、水洗性・後乳化性・溶剤除去性といった対になる概念を表にまとめて覚えると整理しやすくなります。過去の受験者から出題の傾向を聞ける環境があれば活用し、苦手な分野を早めに洗い出しておくと、残りの時間を配分しやすくなります。

二次(実技)の対策

試験体ごとに足切りがあるので、一つの試験体での手順の抜けがそのまま不合格につながります。普段の現場で省略している確認や、会社独自のやり方が身に付いている場合は、試験で求められる標準の手順と自分の癖のずれを洗い出しておくことが大切です。とくに差が出やすいのは次の工程です。

  • 前処理の脱脂と乾燥:油分や水分を残したまま浸透処理に進まない
  • 浸透時間の管理:決められた時間を計って守る
  • 除去の程度:ふき取りすぎて、きずの中の浸透液まで取らない
  • 現像剤の塗布量:薄く均一に塗り、厚塗りで指示模様を隠さない
  • 観察までの時間:現像後の決められた時間内に観察する

指示模様の分類と記録も配点に含まれます。線状か円形状か、きずによる指示模様か疑似指示模様か、寸法をどう測って記録するかを、実際の試験片で繰り返し練習しておくと本番で迷いにくくなります。

レベル2 の検査指示書

レベル2 では、規格や手順書をもとに、実際の作業条件に合った検査指示書を書く力が問われます。現場でレベル2 の上司が書いた指示書を見る機会があれば、どの規格のどの項目を、どの順番で、どの程度具体的に書いているかを読み解いておくと、試験での書き方の型がつかめます。レベル1 で現場経験を積んでからレベル2 に進む人が多いのは、この指示書の内容が実務の理解なしには書きにくいからでもあります。

非破壊検査の資格全体での受験要件や難易度の比較は、非破壊検査の資格一覧と受験要件の比較も判断材料になります。

合格後の更新・再認証とレベル3はどう進むか

資格登録から5年目に書類で更新審査、10年目に再認証試験を受けて資格を維持する流れの図

資格証明書を受け取ったあとも、資格を維持するための手続きと条件があります(GA1 §6.3・§10・§11)。

  • 5 年目:提出書類による更新審査を受け、更新登録する
  • 10 年目:再認証試験を受ける。レベル1 とレベル2 は実技で、合格基準は新規試験の実技と同じ。不合格でも約 6 か月の間に 2 回の再認証再試験を受けられる
  • 業務の中断:関連する NDT 業務から連続 1 年、または 2 回以上の期間の合計で 2 年を超えて離れると、資格証明書は無効になる

部署の異動や転職で PT から離れる期間がある人は、中断の期間を連続と通算の両方で把握しておく必要があります。

レベル3 は、申請する方法のレベル2 を持っていることが前提で、一次は方法共通の基礎試験、二次は方法別の主要方法試験で、どちらも筆記です(GA1 §6.1・§9.1)。2025 年春期の PT レベル3 の主要方法試験の合格率は 22.8% で、レベル1・2 と比べてかなり絞られます(NDT フラッシュ Vol.74 No.9)。レベル3 を視野に入れる人は、レベル2 の段階から手順書や規格の読み込みを意識しておくと、準備の負担を減らせます。

まとめ:いまの立ち位置から受験計画を組む

PT の資格は、訓練時間と視力の条件を満たせば未経験からでも受験でき、試験の合格後に実務経験を証明して登録する仕組みです。最初に決めるべきは、PT と PD のどちらを受けるか、レベル1 から段階的に進むか直接レベル2 を受けるか、そして認証申請の期限までに必要な経験を積める職場にいるかどうかの 3 点です。試験対策では、合格率の低い一次の筆記を軽く見ず、実技は標準の手順と自分の癖のずれをなくすことに時間を割くと、限られた準備期間を有効に使えます。

資格を取ったあとの働き方や、PT の経験がどの業界でどう評価されるかは、職場によって大きく変わります。いまの職場で認証申請までに経験を積めるか、PT と PD のどちらがこれから担当したい仕事に合うかを一人で決めかねている人は、テンキャリの無料キャリア相談で一緒に整理できます。転職するかどうかは、話してから決めれば大丈夫です。認証申請の期限までに経験を積めるかを先に確かめておくだけでも、受験する時期はかなり決めやすくなります。

関連記事